知識を柔軟にアップデートする子どもを見習って

勉強

子どもは、新しいことばを聞いたとき、そのことばだけを覚えているわけではありません。

たとえば、子どもが「りんご」ということばを覚えたとします。

最初は、目の前にある赤い果物を指して、大人から「りんごだよ」と教えてもらったのかもしれません。

「これが、りんごなんや」

子どもは、そんなふうに理解していくのでしょう。

ところが、その後、青いりんごを見たり、絵本の中で小さなりんごを見たり、スーパーでたくさんのりんごを見たりすると、「りんご」ということばの意味は少しずつ変化していきます。

「赤いものだけが『りんご』なのではない」

「大きさが違っても「りんご』」

「絵に描かれたものも『りんご』」

そして、「りんご」は「果物」の一種なのだということも、少しずつ理解していきます。

このように考えると、子どものことばの学習は、単純に「新しいことばを一つ覚える」という作業ではないことが分かります。

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新しいことばを聞くと、知っていることばも動き出す

ちゃ
ちゃ

こんにちは。

「ちゃ」と申します。

娘が3人います。

言語聴覚士として働いています。

コミュニケーションについて沢山考えたいです。

子供達には英語を身につけて、世界中の人とコミュニケーションを楽しんでもらいたいです。

そのために、できる事を日々考えています。

少しでも背中を見てもらえるようにと、英検1級等を取得しました。

子どもが新しいことばを聞いたとき、頭の中では、そのことばの意味を覚えるだけではなく、すでに知っていることばとの関係も考えていると考えられます。

たとえば、「これは果物やで」と教えてもらったとします。

子どもがすでに「りんご」を知っていたとしたら、

「りんごも果物なんかな?」

「じゃあ、バナナも果物?」

「果物って、食べ物のこと?」

というように、新しく聞いた「果物」ということばを、これまでに知っている「りんご」「バナナ」「食べる」などの知識と結びつけていきます。

つまり、新しい知識を得ることで、これまで知っていたことば同士の関係を考え直したり、それぞれの意味を修正したりすることがあるのです。

ここが、子どものことばの学習を考えるうえで、とても面白いところです。

子どもは、新しいことを「追加」しているだけではありません。新しいことを学ぶことで、すでに知っていることも組み替えているのです。

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「知っていたこと」が間違っていることもある

さらに興味深いのは、子どもが新しいことを学ぶ過程で、「以前はそう思っていたけれど、どうやら違うらしい」と考え直すことがあることです。

たとえば、子どもが「鳥は空を飛ぶもの」と理解していたとします。

ところが、ある日、ペンギンを見ます。

「鳥なのに飛ばない」

最初に持っていた「鳥」という概念では説明できません。

そこで子どもは、「鳥は空を飛ぶもの」という理解を見直すことになるかもしれません。

そして、「鳥には、飛ぶ鳥もいれば、飛ばない鳥もいる」という、より広い理解へと変化していく可能性があります。

「鳥には、飛ぶ鳥もいれば、飛ばない鳥もいる」

という、より広い理解へと変化していくわけです。

これは、「最初に覚えたことが間違っていた」という単純な話ではありません。

その時点で持っていた知識を、新しい経験に合わせて少しずつ柔軟に変化させて調整しているのです。

そして、このような調整を何度も繰り返すことで、子どもの世界に対する理解は豊かになっていくのです。

学習とは「知識を増やすこと」だけではない

ここから、子どもの学習について一つ大切なことが見えてきます。

私たちは、「勉強する」というと、新しい知識を頭の中に入れる(覚える)ことをイメージしがちです。

「漢字を覚える」や「英単語を覚える」、「数学の公式を覚える」、そして「歴史上のできごとを覚える」など。

もちろん、それらも学習です。

しかし、本当の意味で学ぶということは、知識を増やすだけではないのです。

「新しく得た情報を、これまで持っていた知識と照らし合わせ、自分の理解を修正していくこと」もまた、学習の重要な部分です。

そう考えると、「知識を多くすること」と「よく学ぶこと」は、必ずしも同じではありません。

たくさんの知識を持っていても、新しい情報が入ってきたときに、「自分はこう思っているから、これは違う」と最初から拒否してしまえば、それ以上の学習は起こりにくくなります。

一方で、「今まで自分はこう考えていた。でも、新しい情報を見ると、少し違うのかもしれない」と柔軟に考えられる人は、持っている知識そのものを更新することができます。

大人になると、なぜ考えを変えにくくなるのか

これは、子どもだけの話ではありません。

むしろ、大人にこそ重要な話なのではないでしょうか。

大人になると、長い時間をかけてさまざまな経験を積みます。

「仕事の経験」や「人間関係」、「成功した経験」、「失敗した経験」、「本を読んだ経験」、そして「誰かから教えてもらった経験」など、

そうした経験から、色々な知識に関して「こういうものだ」という考え方が少しずつできあがっていきます。

これは非常に大切なことです。経験をもとに、いちいちゼロから考えなくても判断できるようになります。ある程度、経験則を生かして、効率的に判断することで、他の重要なことを熟考して決断するためのリソース(エネルギー)を割くことができるのです。

しかし、その一方で、一度できあがった考え方は、ときに「固定観念」にもなります。

「昔からこうやっているから」や「自分の経験ではこうだった」、そして「今までこれでうまくいってきた」など。

こうした考え方は、これまでの経験から生まれたものなので、決して無意味ではありませんが、新しい情報や環境が入ってきたときには、その情報を受け入れることを妨げることもあります。そのため、時には冷静に見直す必要があるのです。

「考えを変えること」は負けではない

ここで大切なのは、考えを変えることを「負け(自己否定)」だと思わないことです。

以前の自分の考えを修正すると、「じゃあ、今までの自分は間違っていたのか」と自己否定に近い感覚が起きるのかもしれません。

新しい考え方を受け入れるには、時間とエネルギーが必要になることがあります。

コペルニクスの地動説が、広く受け入れられるまでに長い時間がかかったことからも、それまでの常識を見直すことの難しさがうかがえます。

ところが、「新しい情報が入ってきた」、「新しい経験をした」、「別の立場の人の話を聞いた」、「研究によって新しいことが分かった」、「社会の状況が変わった」

この様な状況になれば、考えを更新するのも必要です。

むしろ、新しい情報が入ってきても、以前の考えを絶対に変えないことのほうが不自然なのです。

子どもが新しい経験をするたびに「りんご」や「鳥」などの概念を少しずつ修正していくように、大人もまた、自分の持っている知識や考え方を更新していけばいいのです。

学習にも「PDCA」が必要

ここで思い出すのが、仕事などでよく使われる「PDCA」です。

Plan(計画)を立てる。

Do(実行)する。

Check(評価)する。

Act(改善)する。

そして、また次のPlanへ進む。

このサイクルを繰り返すことで、仕事や活動を少しずつ改善していきます。

子どもの学習の過程は、仕事で使われるPDCAと似たところがあります。

「たぶん、こういう意味だろう」と予想する。

実際にことばを使ったり、さまざまな経験をしたりする。

その結果、予想と違うことに気づく。

そして、これまでの理解を修正する。

このように、予想し、経験し、確かめ、修正する過程は、PDCAの考え方と共通しています。

「今の自分」を完成形にしない

私たち大人も、「今の自分の考え」を完成形だと思わないことが大切なのだと思います。

今まで正しいと思っていたことが、後になって変わることもあります。

以前は興味がなかったものに、突然価値を感じることもあります。

苦手だと思っていた人の話を聞いて、「なるほど、そういう考え方もあるのか」と思うこともあります。

仕事についても同じです。

昔は当たり前だった方法が、今ではもっと良い方法に変わっているかもしれません。

医学や福祉の世界でも、新しい研究によって、それまでの常識が見直されることがあるのです。

今までの考えを見直して、変えるのは、誰にとっても難しいことです。ただ、「昔の自分が正しかったか、間違っていたか」ということにこだわることは、あまり意味がありません。

大切なのは、今の自分が持っている情報をもとに、より良い考え方をつくっていくことです。

そして、新しい情報が入ってきたら、また考え直すことです。

子どもから学べること

子どものことばの学習を見ていると、人間は、新しいことを学ぶたびに、自分の理解をつくり直していく存在なのだと感じます。

新しいことばを知ることで、すでに知っていたことばの意味が変わる。新しい経験をすることで、これまでの考え方が変わる。

そして、こうした変化は、子どもだけに起こるものではありません。

大人になってからも、私たちの脳には可塑性があり、経験や学習によって変化する可能性があります。(可塑性とは力や熱を加えることで、物の形や性質が変化することです。ヒトの脳は可塑性があるといわれていて、生まれてから経験や学習で、変化し続けています。)

特に、私たちはネオテニー(幼体成熟)によって進化したと言われています。(ネオテニーとは、子どものような特徴を残したまま、大人になる進化の事です。詳しくは、「ネオテニーによる人間の進化」をご覧ください。)

この柔軟に考えを変化できる私たちの特徴を生かして、変化し続けるべきなのです。

大切なのは、「自分はもう十分に知っている」と慢心しないことです。

今の自分の考えは、現時点での理解にすぎないのかもしれません。

新しい情報や経験に出会ったときには、「これは、今までの自分の考えとどうつながるだろう?」と立ち止まって考えてみる、そして必要があれば、これまでの考えを修正してみるのです。

そうした姿勢を持ち続けることが、学び続けるということなのではないでしょうか。

子どもが新しいことばを学びながら、自分の理解を更新していくように、私たち大人も、新しい経験を通して自分の知識や考え方を更新していく。

Planして、Doして、Checkして、Actする。そして、また次のサイクルへ。

学びに「完成」はありません。子どもの柔軟な学び方に、私たち大人も見習いたいものです。

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