なぜ子どもは言葉を覚えるのか

コミュニケーション

 子ども達に「勉強しなさい!」とたしなめた事のある親御さんたちは多いと思います。また、そのように言われたことがある方も沢山おられるはずです。

私もそうでした。私が小・中学生の時、誰かが少しでも勉強をすると、「ガリ勉」と言ってバカにするような不真面目な子どもだったので、「勉強しなさい」と親に言われ続けたにもかかわらず、「勉強することはカッコ悪い」と、勉強をしようとしなかったことを覚えています。(そのため、成績は下の下でした。)

しかし、そんな私でも、赤ちゃんの時は、言葉を覚えることができました。勉強は嫌いだったのに、言葉は自然に覚えられました。この違いは何でしょうか?

大人に、「早くことばを覚えなさい」とか「おしゃべりできるようになりなさい」等と言われることもなく。

ちゃ
ちゃ

こんにちは。

「ちゃ」と申します。

娘が3人います。

言語聴覚士として働いています。

コミュニケーションについて沢山考えたいです。

子供達には英語を身につけて、世界中の人とコミュニケーションを楽しんでもらいたいです。

そのために、できる事を日々考えています。

少しでも背中を見てもらえるようにと、英検1級等を取得しました。

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子どもが言葉を覚えるスピードの不思議

子どもの成長の道筋に詳細に書いていますが、赤ちゃんは教育委員会が考えた正式な教材なんて無い中で、そして先生に教えられるわけでもなく、一様に1歳で「ママ」や「パパ」等をはじめとする単語を話だし、2歳になる前に、「ママあっち」などの2語文、そして3歳を過ぎると、自分の気持ちだけでなく、他人の気持ちも想像して語ることができるようになります。

中学校(今は小学校)から習いはじめる英語は、何か違って見えます。

多くの人が中学校で3年間、そして高校でも3年間たくさんの専門家が考えた教科書などの教材を使って、資格を持っている先生に教えてもらっているにもかかわらず、自分の気持ちを英語で表現することもままなりません。

この違いは、何なのでしょうか?

このたくさんの人が思ったことのあるこの疑問に多くの学者さんたちの理論がヒントをくれています。

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言語習得を説明する3つの主要理論

「なぜ、みんな幼少期までにことばを獲得できるのか」このような疑問への探求は、古代エジプトの時代まで遡るようです。

そして、現代の言語習得理論を大別すると「生得論的アプローチ(innate approach)」、「行動主義的アプローチ(behaviorism approach)」そして「相互作用論的アプローチ(interactional approach)」に分けられます。

生得論(チョムスキー)

言葉をどのように身につけるのかという問いに対して、アメリカの言語学者ノーム・チョムスキーは「生得論」という考え方を示しました。

彼は、子どもが言語を短期間で習得できるのは、単に周囲の言葉を聞いてまねているからではなく、人間の脳にあらかじめ「言語を学ぶための仕組み」が備わっているからだと考えました。これを「普遍文法」と呼び、世界中の赤ちゃんには最初から言語の設計図があるとしました。

実際、子どもは聞いたことのない文でも文法的に正しい形で作り出すことがあり、これは単なる模倣では説明できません。生得論は、言語習得を「人間に本来備わった能力」として捉える点で大きな影響を与え、現在でも多くの議論の基盤となっています。

行動主義(スキナー)

子どもが言葉を覚える仕組みについて、アメリカの心理学者スキナーは「行動主義」という立場から説明しました。彼は、人の学習はすべて「刺激」と「反応」の積み重ねによって成立すると考え、言語習得も例外ではないと主張します。

たとえば、子どもが偶然「まんま」と発したとき、大人が喜んだり食事を与えたりすると、その反応が子どもにとっての「報酬」となり、同じ音を繰り返すようになります。こうした強化(褒められるなど望ましい結果が起きること)の積み重ねが、言葉の習得につながるというのです。

つまり、子どもは周囲の大人からの働きかけや環境とのやり取りを通して、徐々に言語行動を形成していくと考えました。行動主義は、言語習得を「行動を通してなされる学習」として捉える点で、後の研究にも大きな影響を与えています。

相互作用論(ブルーナー)

子どもが言葉を覚える過程を考えるうえで、心理学者ジェローム・ブルーナーが示した「相互作用論」は重要な視点を与えてくれます。彼は、言語習得は子ども自身の能力だけでなく、大人とのやり取りの中で育まれると考えました。

たとえば、赤ちゃんが指さしをしたとき、大人が「これがワンワンやね」と応じるような場面です。こうした共同注意を介したやり取りが、子どもにとって言葉の意味をつかむ手がかりになります。

ブルーナーは、このように大人が子どもの理解を助ける枠組みを「足場かけ(scaffolding)」と呼びました。子どもは大人の働きかけを受けながら、自分の力で言葉を組み立てていくようになります。相互作用論は、言語習得を「周囲との関わりの中で発達する営み」として捉える点で、現在の教育や発達研究にも大きな影響を与えています。

最新研究が示す「言語習得のリアル」

シナプス取捨選択と統計学習

赤ちゃんの脳では、生まれてすぐから神経同士のつながりであるシナプスが爆発的に増えていきます。これは、外の世界を学ぶために必要になりそうな回路を一度に作り出す準備段階です。生後8か月頃には、視覚をつかさどる部分のシナプス密度が大人の約2倍に達するといわれています。しかし、この大量のつながりがすべて残るわけではありません。日々の経験の中でよく使われる回路は強まり、使われない回路は自然と消えていきます。この「刈り込み」によって、脳は効率よく働くための最適な形に整えられていきます。

こうした脳の仕組みは、言葉の学習にも深く関わっています。赤ちゃんは周囲の音を聞きながら、その並び方や出現頻度を無意識に集計し、どの音がまとまりとして意味を持つのかを推測します。これは特別な教えがなくても自然に働く能力です。シナプスの取捨選択と赤ちゃんなりの統計的学習が組み合わさることで、赤ちゃんは短い期間で言語のルールをつかみ、言葉を話す準備を整えていくのです。

赤ちゃんが「言葉の世界」に入っていくときにも書きましたが、このように1歳になるまでに赤ちゃんは周りで話されている言葉の耳を作っていくのです。

語りかけは「量」より「質」が重要

「文化が育む『ことばの入り口』(英語と日本語の語彙発達を比較:親の語りかけが鍵?)」 でも触れていますが、子どもが言葉を覚えるというのは、ただ「音」と「もの」を結びつけて覚えるだけではありません。言葉には意味があり、その意味を作り出す仕組みを自分で見つけていっています。

まず子どもは、親からの語りかけられる中で、「ことばには意味がある」ということに気づきます。さらに、ことばは音が組み合わさってできていること、そしてその組み合わせ方には決まり(文法)があることも学んでいきます。文法を理解すると、言葉の並べ方を変えることで違う意味を作れることにも気づいたりもします。

また、そのことばには人の気持ちがのっていて、相手の気持ちを受け取ることができ、自分の気持ちもその言葉にのせることもできることも学びます。

こうした仕組みを一つひとつ発見しながら、子どもは自分の力で言葉の世界を広げていっているのです。子どもは、単語を覚えるだけでなく、言葉のルールを見つけ、さらに自分で意味を作り出せるようになっていきます。

まとめ:生得論 × 行動主義× 相互作用論+共感

子どもがどのように言葉を身につけるのかについては、このようにいろいろな考え方があります。 生得論では、人間には生まれつき言語を学ぶための特別な仕組みが備わっていると考え、 行動主義は、周囲の大人の言葉をまねたり、強化される経験を通して言語が身につくと説明します。 相互作用論は、子どもと大人のやり取りの中で、意味や文法の仕組みを子ども自身が発見していくと考えます。

これらの立場はそれぞれ重要な視点を与えてくれます。これらに加えて、実際の子どもの言語発達を支えているのは、もっと根本的な力だと思います。 それは、「三項関係(こどもがことばを獲得できる理由」にも書きましたが、子どもが「あなたと気持ちを共有したい」と願う気持ち、そして 大人が「子供とつながりたい」と応じる気持ちです。

大人と子どもが同じものを見て、同じ気持ちを味わい、互いに「わかり合いたい」と願うとき、三項関係が生まれ、言葉は初めて意味を持ちます。 言語習得の背景には、理論だけでは説明しきれない 共感のエネルギーが流れているのです。 子どもが言葉を覚えるのは、単に他人に意図を伝えるだけではなく、また世界を理解したいからだけでなく、「誰かと世界を共有しつながりたい」と願っているからなのです。

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