「子どもはことばの意味を自分で学び」と「私たちは英語を学校で教えてもらって学ぶ」の違い

お父さんに教える赤ちゃん DWE(ディズニー英語システム)

前回の記事「知識を柔軟にアップデートする子どもを見習って」では、次のようなことを書きました。

  • 子どもは、新しいことばや経験を通して、すでに知っていることの意味や関係を柔軟に見直していきます。
  • 学習とは、知識を増やすだけでなく、自分の理解を修正し、更新することでもあります。大人になると、経験から生まれた固定観念にとらわれがちですが、考えを変えることは負けではありません。
  • 予想し、経験し、確かめ、改善するPDCAのように、今の自分を完成形とせず、新しい情報を受け入れて学び続ける姿勢を、子どもから見習いたいものです。

今回は、こうした子どもの学び方を、外国語を勉強するときにも生かせないか考えてみたいと思います。

子どもは、ことばの意味をどのように学ぶのか

子どもは、新しいことばを覚えるとき、その意味を大人から直接教えてもらっているのでしょうか。

長女が4歳の時に肺炎で入院したことがあります。その時に妻は長女に付き添い、20日間ほど入院生活を送りました。

その間、当時1歳半の次女は、私と一緒におじいちゃんとおばあちゃんの家で生活しました。

約3週間後に妻が久しぶりに次女に会った時にたくさんのことばを覚え、たくさんのことばを話せるようになっていることに驚いていました。

「たまたま語彙が増える時期だったからだろう」と受け流してしまいそうですが、よくよく考えてみると、特別な教材を使って集中的に教えたわけでもないのに、子どもは日常生活の中で、これほど多くのことばを身につけていくのです。

もちろん、大人が「これはりんごだよ」「あれは犬だよ」と教えることはあります。しかし、子どもは教えてもらった説明を、そのまま記憶しているわけではありません。

日常生活の中で、さまざまなものを見たり、触れたり、人の話を聞いたりしながら、自分なりにことばの意味を考え、少しずつ理解を深めていきます。

たとえば、「りんご」ということばを覚えた子どもは、赤いりんごだけでなく、青いりんごや小さなりんご、絵本に描かれたりんごにも出会います。

その経験を通して、「りんご」ということばが、特定の色や大きさのものだけを指すのではないことを学んでいきます。

さらに、『りんご』が『果物』の一種であることや、ほかの果物との共通点・違いなども、経験を通して理解していきます。

子どもは、ことばの意味を一度教えてもらえば、それで学習が終わるわけではありません。経験を重ねながら、自分の頭の中にある知識を少しずつ組み立て、更新しているのです。

発語爆発

外国語の単語を覚えるとき、私たちは何をしているのか

では、大人が外国語を学ぶときはどうでしょうか。

たとえば、英語の「wear」を学ぶとき、多くの人は「wear=着る」と覚えます。

「wear」という英単語を見て、日本語の「着る」を思い浮かべる。

初めて出会う単語の意味を理解するうえで、母語の訳語は大きな助けになります。

しかし、ここで考えてみたいことがあります。

日本語では、服を身につける動作を「着る」と表現します。一方、英語では、服を身につける動作を表すときに「put on」を使い、服を身につけている状態を表すときには「wear」を使います。

たとえば、「put on your coat.(コートを着なさい。)」と「I wear a coat every day.(私はコートを毎日着る。)」

この二つの表現を比べると、違いが分かります。

「put on」は、コートを身につける動作に注目した表現です。それに対して「wear」は、コートを身につけている状態を表します。

日本語では、どちらも「着る」ということばを使って表現できます。しかし、英語では、している状態と動作で表現方法を変えることがあるのです。

つまり、「wear=着る」と覚えただけでは、「wear」と「put on」をどのように使い分けるのかまでは分かりません。

訳語を覚えることは、外国語学習の出発点です。しかし、その訳語だけで外国語の意味や使い方をすべて理解できるわけではありません。

「訳語を知っている」と「そのことばを使える」は違う

この違いは、他の英単語でも見られます。

例えば、「know(知っている)」と「learn(学ぶ、習得する)」も、意味や使い方が異なります。「know」は知識や情報を持っている状態を表すのに対し、「learn」は新しい知識や技能を身につける過程を表します。

このように、日本語では似たことばで表現できても、英語では意味や使い方が異なる場合があります。

また、「know」と「understand」は、どちらも日本語では「知る」「分かる」などと訳されます。

しかし、「I know him.」と「I understand him.」は、同じ意味ではありません。

前者は、その人を知っている、よく知っているという意味で使えます。

一方、後者は、その人の考えや気持ち、行動の理由などを理解しているという意味になります。

日本語の「知っている」と「分かっている」も、場面によって意味が重なったり、異なったりしますね。英語の単語を日本語の訳語だけで覚えていると、こうした違いに気づきにくくなります。

また例えば、初めて会う人に『よろしくお願いします』と伝えたいとき、英語ではどのように表現すればよいでしょうか。

実は、日本語の『よろしくお願いします』に、どんな場面でも使える一つの決まった英語表現があるわけではありません。

日本語の一つの表現に、英語の一つの表現がいつでも対応しているわけではないのです。

外国語の単語を学ぶことは、単に母語の単語と対応づけることではありません。その外国語が、どのような場面で、どのような意味やニュアンスを持って使われるのかを、自分の経験や知識と結びつけながら理解していくことが必要なのです。

子どもの母語学習から見習いたいこと

ここで、もう一度、子どもの母語学習を考えてみましょう。

子どもは、「りんご」ということばを覚えたとき、それを別のことばに翻訳して理解しているわけではありません。

目の前のりんごを見たり、大人がりんごを食べる様子を見たり、絵本の中でりんごに出会ったりする経験を通して、そのことばが使われる場面や意味を自分で学んでいきます。

もちろん、子どもがことばの意味を最初から正確に理解できるわけではありません。むしろ、最初の理解は不完全であり、経験を重ねながら修正されていきます。

外国語を学ぶ私たちも、このような学び方を見習うことができるのではないでしょうか。

英単語を覚えるとき、「日本語では何と訳すのか」だけでなく、「英語では、どんな場面で使われるのか」「どんなことばと一緒に使われるのか」「似た意味の単語とは何が違うのか」と考えてみるのです。

たとえば、単語を辞書で調べたら、例文を読んでみる。実際の会話や文章の中で、その単語がどのように使われているかを確かめる。さらに、自分でもその単語を使って文章を作ってみる。

そうした経験を通して、最初に覚えた訳語だけでは捉えきれなかった意味や使い方が、少しずつ見えてくるはずです。

実をいうと、子どもたちも、このような試行錯誤(trial and error)を日常生活の中で繰り返しているのです。

単語の意味も、学びながら更新していく

前回の記事では、子どもが新しいことばや経験に出会うたびに、すでに知っている知識を見直し、更新していくことについて書きました。

外国語の学習でも、同じことが言えるのではないでしょうか。

最初に覚えた訳語は、学習の出発点です。しかし、それを最終的な理解だと思い込んではいけません。

新しい例文に出会ったとき、「あれ、この単語はこんな使い方もするのか」と気づくことがあります。そのとき、以前に覚えた意味を少し広げたり、似た単語との違いを考え直したりすればよいのです。

語学の学習は、単語と訳語を一対一で結びつけるだけでは終わりません。新しい情報を得るたびに、ことばの意味や使い方についての理解を、少しずつ豊かにしていくべきなのです。

子どもが母語を学ぶときのように、外国語についても、ことばが使われる場面や経験を大切にする。

そして、「この単語は日本語のこのことばと同じだ」と決めつけず、「どこが似ていて、どこが違うのだろう」と頭の片隅で考えてみる。そんな柔軟な姿勢が、外国語をより深く理解することにつながるのではないでしょうか。

単語を覚えることは、学習の始まりです。そのことばが持つ意味を、自分の経験を通して少しずつ理解していく。私たち大人も、子どもの学び方から見習いたいものです。

また、このような学習の仕方を自然な形で促してくれるのが、私がいつもお勧めしている、「ディズニー英語システム(DWE)」の様な教材です。

英語を「訳して理解する」から「経験を通して理解する」へ

DWEでは、映像や歌、会話などを通して、英語の表現に繰り返し触れることができます。例えば、登場人物が何かを食べたり、遊んだり、身支度をしたりする場面で英語を聞くことで、子どもは映像の中の行動と英語の表現を結びつけながら、その意味を考えることができます。

こうした経験を重ねることは、英語を聞くたびに日本語に訳すのではなく、英語の表現そのものから意味を理解する力を育むうえで、一つの助けになると考えられます。また、同じ表現に繰り返し出会うことで、最初は意味が分からなかったことばも、場面や前後のやり取りから少しずつ理解できるようになる可能性があります。

もちろん、映像を見たり、歌を聞いたりするだけで、すべての子どもが英語の意味や使い方を理解できるわけではありません。子どもの興味や理解の程度に応じて、一緒に歌ったり、登場人物のまねをしたり、日常生活の中で関連する英語表現を使ってみたりすることも大切です。教材をきっかけに、実際の経験と英語を結びつける機会を増やしていくのです。

私自身、約20年前にDWEを購入し、子どもたちと英語に触れてきました。わが家での経験を振り返っても、子どもが英語に触れる環境を日常生活の中につくることには、大きな意味があったと感じています。ただし、子どもの英語力は、教材だけでなく、本人の興味や取り組み方、家庭での関わり方など、さまざまな要因によって変わります。

大切なのは、教材に答えを教えてもらうことだけではありません。子ども自身がことばに気づき、意味を考え、実際に使いながら理解を深めていくことです。

子どもが母語を学ぶときに見せる、経験を通してことばの意味を見つけ、理解を更新していく力。その力を英語学習でも生かせるような環境を整えることが、私たち大人にできることの一つではないでしょうか。

経験

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