子どもの学びから考える
私たちの多くの子どもは、たいして英才教育をしていないのに、ペラペラに複雑な日本語を話すことができ、その日本語で考えるようになっています。
しかし、私たちおとなは一所懸命に英語を学校で勉強してもなかなかしゃべることができません。
ましてや、英語で何かを考えるようになるなんて想像も難しいのではないのでしょうか。
今回は、子どもが言葉を学ぶ姿勢などを考えて、それが私たち成長した大人の学習のヒントにならないか考えてみます。
また、最後に私がおすすめするDWEにも少し触れますね。

こんにちは。
「ちゃ」と申します。
娘が3人います。
言語聴覚士として働いています。
コミュニケーションについて沢山考えたいです。
子供達には英語を身につけて、世界中の人とコミュニケーションを楽しんでもらいたいです。
そのために、できる事を日々考えています。
少しでも背中を見てもらえるようにと、英検1級等を取得しました。
子どもは、いったいどのようにして、ことばを覚えていくのでしょうか。
「これはりんごだよ」
「ワンワンだね」
「大きいね」
大人が教えたことを、一つひとつ覚えていく。
もちろん、そういう側面もあります。
しかし、子どもの学習は、それだけではありません。
子どもは、周囲の世界から得た情報を、自分がすでに持っている知識と結びつけながら、そこから新しいことを見つけていきます。
そして、一度学んだことを次に何かを学ぶための土台にしています。
つまり子どもは、知識を一つずつ蓄えているだけではありません。学んだことを使って新しいことを理解し、そこで得た新しい知識を、さらに次の学習に使っているのです。子どもの学習は、知識が次の知識を生み出していく、動き続ける営みなのです。
私は、子どものことばについて考えるとき、この「生きた学習」という視点がとても大切で、それはことばの学習に留まらないと思っています。
子どもは、ことばを足掛かりにして学んでいく
ことばを覚えることは、単にコミュニケーションの道具を手に入れることではありません。
例えば、「りんご」ということばを覚えたとします。
最初は目の前にある一つのりんごを指して「りんご」と呼ぶだけかもしれません。
しかし、いろいろなりんごに出会っていくと、「赤いりんごもある。緑のりんごもある。大きなりんごも、小さなりんごもある。切ったりんごも、丸ごとのりんごもある。」
そんなふうに、子どもの中で少しずつ知識が整理されていきます。
つまり、「りんご」という一つのことばを覚えることを新しい知識を生み出すきっかけになっているのです。
ことばは、世界に名前をつけるためだけのものではありません。
世界を整理し、物事を分類し、関係づけるための道具にもなっているのです。
ことばを覚えることで、「見えないもの」も理解できるようになる
さらに面白いのは、ことばによって、直接見ることのできないものについても考えられるようになることです。
そのひとつが「数」です。
「1」「2」「3」ということばを覚えることは、数字の名前を暗記することだけではありません。
「1個」と「2個」は違う。
「2個」と「3個」も違う。
そして、りんごが2個でも、ボールが2個でも、「2」という関係は同じです。
こうした経験を重ねることで、子どもは具体的な物から離れて、「数」という抽象的な概念を理解していきます。
具体的な物についての経験を重ねながら、子どもは少しずつ、目の前の物を超えた「数」という概念を理解していきます。
そして、その新しくできた概念が、また次の学習に使われます。
「知ったこと」が「次に知ること」を助ける
例えば、「大きい」ということばを知った子どもは、「小さい」ということばに出会ったときにも、その意味を理解しやすくなります。
「上」を知っていれば、「下」ということばにも気づきやすい。
「昨日」を知れば、「今日」「明日」という時間の関係にも興味が向くかもしれません。
つまり、知識は一つひとつ独立しているわけではありません。
新しく覚えたことが、それまでに覚えたこととつながり、新しい意味を生み出していくのです。
そして、その新しい意味が、さらに次の学習の土台になる。
この循環が、ことばをはじめとするいろんな物事の学習をどんどん豊かにしていきます。
子どもは「学習の仕方」も学んでいる
ここには、もう一つ重要なことがあります。
子どもは知識だけを増やしているのではありません。
「どうやったら分かるのか」という、学び方そのものも経験から身につけていきます。
最初は、大人の言葉をそのまま聞いているだけだった子どもが、次第に、
「これは前に聞いたことと似ている」
「この言葉は、こういう場面で使うんや」
「この二つは反対の意味なんや」
「これは同じ仲間なんや」
というように、いろんなことに自分で気づくようになっていきます。
もちろん、子どもがこうしたことを頭の中で言葉にして考えているとは限りません。
むしろ、たくさんの経験の中から、少しずつパターンを見つけているのです。
そして、そこで身につけた「分かり方」が、次の学習にも使われます。
そのため、子どもの学習は、

という循環になっています。
子どもには、周囲の情報を取り込み、これまでの知識と結びつけながら、新しいことを学んでいく力がもともと備わっています。
これは特別な能力ではない
こう考えると、子どもの学習能力というか、そもそも私たちが持っている学習能力は能動的なもので、「知りたい」「分かりたい」という気持ちを持ちながら、周囲から得た情報を自分の知識と結びつけ、いろいろなことを理解していきます。
子ども(というか私達も)は、最初からすべてを教えてもらわなければ何も分からない存在ではありません。
もちろん、大人からの働きかけや環境は重要です。
しかし、与えられた情報をそのまま蓄えるだけではなく、自分が持っている知識と結びつけ、そこから新しいことを見つけていくのです。
そして、学んだことを次の学習に使っていきます。
学びながら、学習の仕方も少しずつ身につけ、同時に知識を増やしていくのです。
このようなことを自然にしているので、特に子どもは驚くほどのスピードで世界を理解していき、ことばを覚えていくことができるのです。
では、英語を学ぶときは?
私たちが成長して(だいたい小・中学生)から、英語を学びますが、このような学び方ができているでしょうか?
きちんと教育課程を終えて、資格を取った先生たちが、丁寧に作られた教科書を使って、教えてくれるのです。習ったことを確認するためのテストなんかも定期的に行い、確認までしてくれます。
私自身、周囲を見ても、中学校から高校まで6年間英語を学んだにもかかわらず、英語を使って外国人と自然にコミュニケーションを取れるようになった人は、決して多くないと感じます。
きちんと教えてもらっているにもかかわらず。
日本語は、学校で教科書を使って体系的に学ぶよりずっと前から、家庭や社会の中で、周囲の人とのやり取りを通して身につけていきます。
教わる学習にも意味があります。しかし、子どもが本来持っている「気づく・つなげる・推測する」という学び方も、英語学習の中で生かせるのではないでしょうか。
本来は英語を学ぶときも、基本的な学び方のあるべき姿は同じなのではないでしょうか?
英語はテキストを使って、先生に言われるままに、「book=本」、「Hello=こんにちは」などと覚えています。
「bookに”s”がつくと複数形」などということも一つひとつ教えてもらいます。
しかし、本来は子ども自身が、周りで話されていることばに注意して耳を傾け、色々なことを自分で発見していきます。
そのように、自分で気づいたり、発見したりする経験があるからこそ、単に教えられた知識としてではなく、自分の中の知識としてつながっていくのです。
英単語を一つ覚える。
表現を一つ知る。
歌の中で同じフレーズを何度も聞く。
テキストの中で、同じ言葉が違う場面で使われる。
このような経験を通して、子どもはそれまでに得た知識を使いながら、新しい表現などを理解するのです。
一つの言葉を知ったことが、次の言葉を知るための土台になります。
一つの表現を知ったことが、別の表現の意味を推測する手がかりになります。
そうやって、少しずつ言葉同士の関係ができていきます。
ただそれは、受動的に関係づけてもらうものではなく、自分自身で推測したりしながら、関係性などを発見していくのです。
英語学習でも、この様な作業がなされるべきで、「知識を増やすこと」と「得た知識を使って新しいことを見つけていくこと」が循環していくと血となり肉となっていくのです。
DWEは、こうした子どもの学び方に沿って活用できる
ここで、私達が長年使ってきたDWE(ディズニー英語システム)について考えてみたいと思います。
DWEについて語るとき、「英語が話せるようになる」や「英単語を覚える」、そして「英語の歌を歌えるようになる」というような結果に目が向きやすいと思います。
もちろん、それもDWEを使う目的の一つでしょう。
しかし、私がDWEを長く使ってきて面白いと思うのは、DWEを、そのような子どもの学び方を生かすための環境の一つとして活用できるということです。
例えば、同じ英語表現に色々なかたちで繰り返し触れたり、音と映像を一緒に入力したり、具体的な場面の中で言葉を聞いたりします。そして聞いたことのある言葉に、別の場面で出会ったりします。
このような経験を通して、子どもは、それまでに得た知識を使いながら、新しいことを推測しながら理解していくことができるのです。
ここで大切なのは、「覚えさせる」ことだけを目的にしないことです。
子ども自身が、経験の中から言葉の意味や関係を少しずつ見つけていくことが大切で、その材料を繰り返し提供することが、周りの環境をつくる大人の役割です。
そう考えると、DWEの使い方も少し変わってくるかもしれません。
「教える」より、「学べる環境をつくる」
子どもに何かを身につけさせようとすると、私たちはつい、
「教えなければ」や「覚えさせなければ」などと考えてしまいます。
しかし、子どもの学習の仕組みを考えると、必ずしもそれだけが方法ではありません。
子どもが自分で気づき、考え、そしてつなげることができるように、十分な経験を用意する。
そして、同じことに何度も出会えるようにする。
その中で、子ども自身が知識を組み立てていくのを待つ。
このような子どもの能動的な姿勢を大切にすることは、英語学習にも当てはまるのではないでしょうか。
DWEも、「これを覚えなさい」と子どもに知識を詰め込むためだけに使うのではなく、「子どもが自分の持っている知識を使いながら、次の知識を獲得していくための環境の一つとして活用する」
そんな使い方ができると思います。
英語教材に求めたいのは「どれだけ教えられるか」だけではなく、「子どもが自分で気づける材料がどれだけあるか」ではないか」ということです。
英語の先にあるもの
私は、英語学習について考えるとき、「英語ができるようになる」という結果だけに注目する必要はないと思っています。
子どもは、ことばを学びながら世界を理解していきます。
知っていることが増えると、今まで気づかなかった関係に気づくようになります。
新しい概念を獲得すると、それを使って、さらに新しいことを理解できるようになるのです。
そして、その経験を重ねることで、「学ぶ」ということ自体が少しずつ上手になっていく。
これは英語に限った話ではありません。
人間が生涯にわたって学び続けるための、とても基本的な仕組みなのだと思います。
そのため、子どもの英語学習を考えるときも、
「何歳までに何語覚えたか」や「いつ英語を話し始めたか」なんかだけではなく、
「この子は、今までに知ったことを使って、何を新しく理解しようとしているのだろう?」
という視点を持ってみてもよいのではないでしょうか。
子どもは、学びながら学んでいます。そして、今日の学びが、明日の学びを生み出していきます。
DWEもまた、そうした子ども本来の学習の力を引き出すための「材料」や「環境」の一つとして考えることができるのではないでしょうか。
英語を教えることだけではなく、子どもが自分で学んでいくための経験を増やすこと。
私は、そこに子どもの英語学習を考える面白さがあるように思います。


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