「DWEって、どんな家庭に向いているの?」
ディズニーのキャラクターを使った英語教材として知られているDWE(ディズニー英語システム)ですが、子どもの英語教育を考えていると、一度は気になる教材かもしれません。
ただ、高価なため、
「本当にうちの子に合うのかな?」
「買ったら英語が話せるようになるの?」
「DWEだけで大丈夫なの?」
と迷う方も多いのではないでしょうか。
私は言語聴覚士として、子どものことばやコミュニケーションについて考えてきました。そして、約20年前にDWEを購入し、子どもたちと実際に使ってきました。
その経験から感じるのは、DWEは「誰にでも合う教材」というより、家庭での取り組み方によって価値が大きく変わる教材だということです。
この記事では、言語聴覚士として、そして実際にDWEを使った親として、DWEがどんな家庭に向いているのかを考えてみたいと思います。
結論を先に書くと、DWEが向いているのは、
①幼い頃から英語に触れさせたい家庭、②親子で教材を楽しめる家庭、③英語を生活の中に取り入れたい家庭、④長期的に取り組みたい家庭です。

こんにちは。
「ちゃ」と申します。
娘が3人います。
言語聴覚士として働いています。
コミュニケーションについて沢山考えたいです。
子供達には英語を身につけて、世界中の人とコミュニケーションを楽しんでもらいたいです。
そのために、できる事を日々考えています。
少しでも背中を見てもらえるようにと、英検1級等を取得しました。
DWEは何をする教材なのか
まず考えておきたいのは、DWEを「英語を勉強するための教材」とだけ考えないことです。
子どもがことばを獲得していく過程では、最初から文法や単語を覚えるわけではありません。
たとえば、赤ちゃんは周囲の大人が話していることばを何度も聞きます。その中で、「この音をよく聞くな」や「この言い方は、こういう場面で使われているな」という経験を少しずつ積み重ねていきます。
英語も同じです。
英語の音を聞き、フレーズを聞き、歌や映像などを通して何度も英語に触れる。そうした経験を長い時間積み重ねていけることが、DWEの大きな特徴の一つだと私は考えています。
つまり、DWEは「英語を覚えさせる教材」というより、子どもの生活の中に英語に触れる時間をつくる教材として考えると分かりやすいでしょう。
DWEで期待できること
では、DWEを継続して使うことで、どのようなことが期待できるのでしょうか。
英語の音への慣れ
日本語と英語では、使われている音や音の組み合わせが異なります。小さい頃から英語を繰り返し聞くことで、英語特有の音やリズムに触れる機会を増やすことができます。
これは、英語を「勉強する」というより、まず英語という音声に慣れていくという意味で重要です。
「慣れるだけでは~‥」と思われる方もおられると思いますが、この「慣れ」は本当に重要です。
少し、イメージがずれるかもしれませんが、たとえばワサビを食べることを想像してください。
子どもの頃、ワサビを最初に食べた時、舌がしびれてびっくりしました。
「大人は何でこんなものをわざわざ付けて食べるんやろう?」と不思議に思いました。
しかし、今は寿司や刺身を食べる時、わざわざ冷蔵庫からワサビを引っ張り出してきます。そして、ワサビをつけて食べた時、「これこれ(この味が欲しかった)」と心でつぶやいています。
英語も同じで、英語がまったくわからない時は、街角で外国の方が英語を話しているのを聞いても、「うわ~、何言ってるかわからん。話しかけんといてや~。(汗)」と思うのが、関の山でしたが、少し分かるようになると、「何て言ってるんやろ~?」と耳を傾けて、分からないなりに拒否感なく積極的に耳を傾けることができるようになりました。
DWEなどで、楽しい映像などと共に、英語に触れ続け、慣れることで、この積極的な姿勢を生み出し、その後の英語学習に良い影響を与えてくれます。

語彙
繰り返し英語を聞いていると、特定の単語を何度も耳にすることになります。
映像や歌、場面などと一緒にことばを聞くことで、単語だけを暗記するのとは違った形で英語に触れることができます。ことばのスキーマ(物事を理解するための枠組み)ができるのです。(スキーマの詳しい説明は「スキーマと言語発達」をご覧ください。)
私たちは母語を学ぶ時、辞書で意味を調べるように「りんご→バラ科の果物で、赤・緑・黄などの色があり、甘酸っぱい味が特徴的」などと覚えているわけではありません。
色々な経験を通して、「りんご」を知っています。
経験を通して、私達はことばを理解して、覚えているのです。
DWEで英語に触れていると、映像や歌、場面などと英語が結びつき、英語のことばを理解するためのスキーマが少しずつ形成されていく可能性があります。
フレーズ
英語学習では、単語を一つずつ覚えるだけではなく、実際によく使われる表現をまとまりとして知っていくことも大切です。
ちょっと歌や映画で見聞きしたフレーズが、英語を話している時に、自分のことばのように口をついて出てくることがあります。また、文法などを学んだ後に、覚えていたその文法が当てはまるフレーズを噛み砕いてみると、その文法の理解が深まることもあります。
このように、どんな形で経験するかわかりませんが、歌や映画で知らず知らずのうちに覚えたフレーズが役に立った経験は、1回や2回ではありません。
これは、スティーブ・ジョブスのスタンフォード大学卒業式でのスピーチの内容にあった、「connecting the dots」のような話で、覚えたフレーズはいつどのような形で役に立つかわかりませんがいつか役に立ったりするものです。
「You can’t connect the dots looking forward. you can only connect them looking backwards. So you have to trust that the dots will somehow connect in your future.(将来をあらかじめ見据えて、点と点をつなぎあわせることなどできません。できるのは、後からつなぎ合わせることだけです。だから、みなさんは今やっていることがいずれ、何らかの形で人生のどこかでつながって実を結ぶだろうと信じるしかない。)」
とジョブスは言ってくれていました。

DWEでは、歌や会話などを通して、そのような英語のフレーズを繰り返し聞くことができます。
聞き慣れたフレーズは知らず知らずのうちに積み重なり、将来の糧となっていきます。
発音・リズム・イントネーション
英語には、日本語とは異なるリズムやイントネーションがあります。こうした特徴は、文字だけを見て勉強しているだけでは身につけにくい部分です。
歌や会話を繰り返し聞くことで、英語らしい音の流れに触れ、自然な形でこうした英語らしい音の流れに触れられることは、幼い時期から英語を学ぶ一つのメリットだと思います。
娘たちもDWEを見て育ったこともあり、私が発音を教えたわけではありませんが、英語の発音やリズム、イントネーションには比較的自然に慣れていったように感じます。
英語への心理的ハードル
もう一つ、私が大切だと思うのが「英語に対する心理的なハードル」です。
英語を学校の教科として初めて本格的に学ぶと、「英語は難しい」、「間違えたら恥ずかしい」、「英語を話すのは特別なこと」などと感じる子どもがいます。(私もその1人でした)
一方、小さい頃から英語の音や歌に触れていれば、英語そのものに対する抵抗感が少なくなるようです。上記した「英語の音への慣れ」とも通じるところがあるのですが、娘たちもリラックスして、積極的に学んでくれています。
このように、英語学習の心理的ハードルが下がるので、小・中学校から始まる学校での英語学習で、娘たちは良いスタートができているようです。
これは、単なる「英語力」とは別の価値ではないでしょうか。
DWEだけでは足りないこと
これは、DWEについて考えるときに私が特に大切だと思っているところです。
DWEに限らず、どれだけ優れた教材であっても、教材だけでことばが完成するわけではありません。子どものことばは、実際の人とのやり取りの中で育っていくからです。
たとえば、
「これ、食べる?」
「りんご!」
「そやな。真っ赤なりんごやな!おいしそうやな!」
ことばを覚える過程で、このような親子のやり取りがあったりします。子どもが何かを言ったとき、周りの大人が反応します。
子どもが間違えたときは、大人が意味をくみ取ったりもします。子どもの興味に合わせて、大人がことばを返したりすることもあります。こうしたやり取りには、教材にはない「相手とのコミュニケーション」があります。そして、そのコミュニケーションの醍醐味は(前回の「子どもの英語教育は何歳から?(実は『年齢』よりも大切なことがある)」でもお伝えしましたが)「共感」です。
これはDWEで触れる英語でも同じです。
英語をたくさん聞いたり読んだりすることは大切ですが、インプットだけがコミュニケーションではありません。
「伝えたい」、「相手に分かってほしい」、「相手の言っていることを知りたい」と思いながら行う、実際のコミュニケーションの経験も必要です。その意味では、DWEを使うのであれば、DWEで英語を聞く時間と人とコミュニケーションする時間の両方を大切にしたいところです。これは、言語聴覚士として私が特に伝えたいポイントです。
DWEが向いている家庭
では、どんな家庭ならDWEを活用しやすいのでしょうか。
私は、次のような家庭はDWEとの相性を考えやすいと思います。
小さい頃から英語に触れさせたい家庭
「できれば子どもの頃から英語を身近なものにしたい」という家庭です。
英語を学校の授業だけで始めるのではなく、日常生活の中で少しずつ触れさせたい場合には、DWEの考え方と相性が良いでしょう。
また、幼少期の子どもの発達段階に合わせた教材に設計されているので、子どもの認知発達に沿って、英語を理解できるようになっています。
例えば、「大きい・小さい」「同じ・違う」といった概念は、幼児期の中で少しずつ理解が深まっていきます。色や形、大きさなど、物の特徴を表すことばも、こうした認知の発達とともに少しずつ増えていきます。
それらのことばが出てくるという事は、「子どもがそれらに興味を持ちはじめている」という事です。そしてそのような子どもの興味に合わせた教材設計がされています。
この認知が発達し、ことばが出はじめる子どもに合わせた内容になっているので、「小さい頃から英語に触れさせたい」という家庭にぴったりの教材です。
親も一緒に取り組める家庭
DWEは子どもだけで完結するものではありません。
子どもだけに教材を渡して、「これをやっておいてね」という使い方よりも、「一緒に見よう」、「この歌、楽しいね」と、親も関わりながら使える家庭のほうが、教材を生活の中に取り入れやすいと思います。
子どもと一緒に楽しむことは、英語そのものだけでなく、親子の「共感」を生み出すことにもつながります。私は、この「一緒に楽しむ」という経験も、DWEを家庭で使う大きな意味の一つだと思っています。
英語を「勉強」ではなく生活の中に入れたい家庭

DWEを「英語教材」という構えた意識で捉えると、それに取り組むことが「義務」のようなものになってしまい、コミュニケーションの本質から逸れてしまいます。
本来、コミュニケーションは「義務」ではなく、「生活」の一部で、楽しいことなのです。コミュニケーションを楽しむための道具であることば(英語)はそれを使う時はもちろん、覚える時も楽しめるものでないといけません。
毎日何十分も机に向かって英語を勉強するというより、「遊んでいるときに英語を流す」、「車の中で英語の歌を一緒に歌う」、「家事をしている間につい英語が口からこぼれる」、
そんなふうに、英語を生活の一部にしたいと思える家庭はDWEを有効活用できると言えます。
長期的に取り組みたい家庭
当然ですが、ことばの獲得は一朝一夕でなせるわけではありません。
幼児期の英語教育では、「短期間で結果を出す」という考え方より、長い期間にわたって英語に触れる環境をつくることが重要になります。
そのため、「買ったらすぐに結果が出てほしい」
というより、
「子どもの成長に合わせて長く使っていきたい」と考える家庭のほうが、DWEを活用しやすいのではないでしょうか。
逆に向いていない可能性がある家庭
一方で、DWEを購入すれば必ず活用できるとは限りません。
たとえば、
「教材を買えば、親が何もしなくても英語を身につけてくれるはず」
と考えている場合です。

子どもは教材そのものから英語を学ぶというより、教材を使った経験を積み重ね、その経験から英語を血肉にしていくのです。
そのため、購入しただけで満足してしまうと、十分に活用できない可能性があります。
また、「短期間で英語を話せるようになってほしい」という家庭にも、必ずしも向いているとは言えません。
子どもの言語獲得は、一日や二日で完成するものではありません。
日本語でさえ、何年もかけて身につけて、母語として使用するその日本語も少しずつ複雑になっていき、洗練されていきます。英語についても、長い目で見る必要があります。
そしてもう一つ。子ども自身が英語に興味を示さない場合には、無理に続ける必要もないと私は思います。教材との相性だけでなく、子どもの興味や家庭の生活スタイルとの相性も大切です。
20年前に購入した私ならどうするか
ここまで読んで、「じゃあ、結局DWEは買ったほうがいいの?どっちなの?」と思われるかもしれません。
私自身、約20年前にDWEを購入しました。
そして、今振り返ってみると、DWEの価値を「英語教材としてどれだけ優れているか」だけで判断するのは少し違うように感じています。
私にとってDWEは、子どもたちの生活の中に英語を置くきっかけの一つでした。
もちろん、DWEだけで子どもの英語が完成するわけではありません。
日常生活の中で英語に触れたり、学校で英語を学んだり、さまざまな経験が重なっていきます。
だからこそ、もし20年前に戻ったとしても、私は「英語に触れる環境を家庭につくる」という意味で、DWEを選択肢の一つとして考えると思います。
ただし、今の私なら、購入する前にもう少し慎重に、
「我が家の生活の中で本当に続けられるか」を考えるでしょう。
高価な教材だからこそ、「良い教材かどうか」だけではなく、
「我が家で使い続けられる教材かどうか」を見ることが大切だと思うからです。
迷っているなら、まず無料サンプル
ここまで読んで、
「DWEはちょっと気になる。でも、いきなり購入するのは……」
という方もいると思います。
私も、いきなり購入を決める必要はないと思います。
子どもによって、好きなものは違います。
映像が好きな子もいれば、歌が好きな子もいます。
同じ教材でも、反応は一人ひとり違います。
そのため、購入するかどうかを決める前に、
「まず子どもがどんな反応をするのかを確認してみる。」という方法があります。
公式サイトなどで提供されている無料サンプルを利用して、実際に子どもと一緒に英語に触れてみてください。
そして、「この子、楽しそうだな」や「この歌は何度も聞きたがるな」、「我が家なら、このくらいなら続けられそうだな」などと感じられるかを見てみましょう。
教材選びで大切なのは、「一番良い教材」を探すことだけではありません。
その家庭と、その子どもに合う教材を見つけること。
私は、20年前にDWEを購入して実際に使ってきた経験と、言語聴覚士としてことばについて考えてきた経験から、そう感じています。
DWEを検討しているなら、まずは子どもと一緒に英語に触れてみる。
そこから考えてみても、遅くはないのではないでしょうか。


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