前回の記事を書いているときに、ふと思い出したことがあります。以前、「『お願いします』は英語で何と言うの?」と聞かれたことがありましたが、そのとき、私はすぐに答えることができませんでした。
誰かに何かを頼むとき、私たちはよく「お願いします」という言葉を使います。
仕事を依頼するとき、お店で注文するとき、誰かに手伝ってもらいたいとき、あるいは初めて会った人に挨拶するときにも私たちはこの言葉を使います。
とても便利な言葉ですが、「英語では「お願いします」を一つの決まった表現に置き換えることはできない」ということにそのとき気づきました。
では、「お願いします」と言いたいときは英語で何と言えばよいのでしょうか。
実は、英語では相手に何をお願いしたいのか、どのような場面なのかによって表現が変わります。
今回は、日常生活でよく使われる「お願いします」の英語表現を紹介します。
Please:何かをお願いするときの基本表現
「お願いします」と聞いて、最初に思い浮かぶ英単語は「Please」ではないでしょうか。
「Please」は、相手に何かをしてもらいたいときに使う基本的な表現です。
例えば、
- Please help me.(手伝ってください)
- Please wait a moment.(少しお待ちください)
- Please tell me.(教えてください)
というような使い方になります。
このように、「Please」を動詞の前に置くことで、相手に何かを指示する命令文を、より丁寧な依頼やお願いの表現にすることができます。
ただ、「Please」そのものが、どのような場面でも日本語の「お願いします」と同じような意味になるわけではありません。
「Please have a seat.」は「どうぞお座りください。」ですし、「Please come in.」は「どうぞお入りください。」などと訳せます。そして、例えば、「Please help yourself.」に至っては、「ご自由にお取りください。」と訳すことができたりして、「Please」そのものの訳がなくなったりします。
日本語に訳すと「Please」に当たる言葉がなくなることもあります。しかし、「Please help yourself.」という表現には、相手に対する丁寧な勧めや配慮が含まれています。

Could you ~?:丁寧にお願いするとき
他に、相手に何かを頼むとき、もう少し丁寧な表現にしたい場合は、「Could you ~? 」が便利です。
例えば、
- Could you help me?(手伝っていただけますか?)
- Could you open the window?(窓を開けていただけますか?)
- Could you explain it again?(もう一度説明していただけますか?)
などと表現します。
Could you ~? は、直訳すると「~していただけますか?」という意味で、相手に何かをしてもらえるかどうかを尋ねる疑問文です。命令文とは異なり、相手にできるかどうかを尋ねる形にすることで、丁寧に依頼することができます。
ちなみに、Can you ~? も同じように使えますが、Could you ~? のほうが一般的に丁寧で、少し控えめな印象になります。
仕事の場面や、あまり親しくない人にお願いするときにも使いやすい表現です。
I’d like ~:何かをお願いしたいとき
お店で注文したり、サービスを依頼したりするときには、I’d like ~ という表現もよく使われます。
I’d like は I would like の短縮形で、「~が欲しいです」「~をいただきたいです」という意味で、自分の希望を丁寧に伝える表現です。
例えば、
- I’d like a cup of coffee.(コーヒーを一杯お願いします)
- I’d like a room for two.(2人部屋をお願いします)
- I’d like some water.(お水をお願いします)
というように使います。
I want ~ も「~が欲しい」という意味ですが、これは場面によっては直接的に聞こえ、少し無作法に聞こえることがあります。
そのため、相手に丁寧に希望を伝えたいときにはI’d like ~ が便利です。
Thank you in advance.:事前にお願いするとき

仕事のメールなどで、相手に何かを依頼するときに使われる表現に、
「Thank you in advance.」があります。これは「前もってお礼を申し上げます」という意味です。
例えば、資料の確認をお願いするメールの最後に添えることができます。
日本語の「(よろしく)お願いします」に近い働きをすることがあります。
ただし、相手がまだ依頼を引き受けていない段階で使うため、状況によっては少し一方的な印象を与え、相手が依頼を引き受けてくれることを前提にしているように受け取られる場合もあります。
相手との関係や依頼の内容を考えて使うことが大切です。
日本語の「よろしくお願いします」は英語で何と言う?

ここまで紹介した表現を見ても分かるように、英語ではお願いする内容や状況によって言葉を使い分けます。
では、日本語でよく使う「よろしくお願いします」はどうでしょうか。
例えば、初対面の人に自己紹介をした後の「よろしくお願いします」。
この場合は、
Nice to meet you.「お会いできてうれしいです(、よろしくお願いします)。」
という表現が自然です。
日本語の「初めまして。よろしくお願いします。」という一連の挨拶を、英語では「Nice to meet you.」で表現することがあります。
また、仕事を一緒にする人に対しては、
I look forward to working with you.「あなたと一緒に仕事ができることを楽しみにしています(、よろしくお願いします)。」という表現も使えます。
なお、英語では「I look forward to ~」の後ろに動詞を置く場合、動詞は必ず-ing形になります。
このように、日本語の「よろしくお願いします」にも、英語では決まった一つの訳語があるわけではありません。

まとめ:言葉の意味は、使われる場面によって変わる
日本語の「お願いします」は、とても便利な言葉です。
しかし、その便利さゆえに、私たちはさまざまな場面で同じ言葉を使っています。
一方、英語では、相手に何をしてほしいのか、どのような気持ちを伝えたいのかによって表現を使い分けます。
これは、単に日本語と英語の文法が違うという話だけではありません。
言葉の意味は、単語だけで決まるのではなく、使われる状況や相手との関係によっても変わります。
外国語を学ぶときには、外国の言葉をそのまま日本語に置き換えるのではなく、「自分は相手に何を伝えたいのか」を考えることが大切だということです。
「お願いします」という何気ない一言で、外国語を学ぶことの本質の一端が見えたような気がします。
子どもが日常生活のさまざまな経験を通して母語の意味を学んでいくように、外国語を学ぶときにも、単語の意味だけでなく、その言葉が使われる場面や背景に目を向ける必要があるのではないでしょうか。


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