英語を勉強する人が一度は考える疑問です。
答えは、「Yes」です。
文法は基本的な英語という言葉の骨格を私達に示してくれます。
それはつまり、文法を理解する事は英語を身につける大まかな道筋を示してくれるということです。
よく、英語を勉強する上で、「英語はフレーズを沢山覚えるべきだ」や「文法なんか気にしてネイティブの人達は話していない」等と言う意見があります。
この様な意見も間違いではありません。
ただ、「英語はフレーズを沢山覚えるべきだ」、「文法なんか気にしてネイティブの人達は話していない」=「文法は重要ではない」とはならないだけの事です。

こんにちは。
「ちゃ」と申します。
娘が3人います。
言語聴覚士として働いています。
コミュニケーションについて沢山考えたいです。
子供達には英語を身につけて、世界中の人とコミュニケーションを楽しんでもらいたいです。
そのために、できる事を日々考えています。
少しでも背中を見てもらえるようにと、英検1級等を取得しました。
文法を勉強してさえいればいい?
中学校で英語を勉強し始めた時に、英語の授業で先生が一所懸命に挨拶などの定型文や基礎的な単語と並行して、文法について教えてくれていました。
数学の公式や歴史の年号を覚える様に文法を理解して覚え、それに当てはめて、文章を作ったり、読んだりしました。
文法を論理立てて理解する事で、他の科目と同じ様に「勉強した」という気分になる事ができました。
そして、英語を分かった気になっていました。
「途方もない数の単語や熟語を覚えるよりも、文法を駆使する方が、英語をマスターする近道になるのでは?もっと要領よく英語を身につける方法があるはず。」と思っていました。
しかし、英語の学習を進めるにつれて、「文法も重要な要素だが、それだけでは理解できなかったり、使えるようにならない」事、そして「英語の勉強に近道はない」事が分かってきました。
それはつまり、文法をどれだけ極めても、英語の全てではないという事です。
文法は英語の要素の一部に過ぎない
文法は言語の「骨格」に過ぎず、自然な文章を作ったり理解したりす為には、その他の多くの要素が必要だからです。
主な理由を以下に解説します。
1. コロケーション(連語)の知識
これは最も大きな理由の一つです。単語は文法通りに組み合わせれば良いわけではなく、よく使われる自然な組み合わせが存在します。
例えば以下のようなものです。
· 不自然: dark coffee(濃いコーヒー)
· 自然: strong coffee(濃いコーヒー)
· 不自然: strong rain(強い雨)
· 自然: heavy rain(激しい雨)
文法的な間違えは無くても、単語の組み合わせがネイティブが使わないものだと、不自然に響きます。
2. 直訳思考(母国語の干涉)
日本語の発想や表現を、そのまま英語の単語に置き換えてしまうと、ネイティブにとって不自然になる事があります。
· 日本語的発想: Rain is falling. (雨が降っています。)
· 自然な英語: It’s raining.
· 日本語的発想: My hobby is reading books. (私の趣味は読書です)
· 自然な英語: I like reading. または I enjoy reading.
文法に頼りすぎると日本語をそのまま英語に置き換えてしまう様な事をしてしまいます。
3. 語用論(Pragmatics)
「誰に、どんな場面で、どのように話すか」という、言葉の使い分けに関するルールです。文法が正しくても、状況に合わない表現を使うと不自然になります。
· 友達へのメール: I would be most grateful if you could send me the document.(文法的に完璧だが、友達には堅すぎる)
· 自然な表現: Can you send me the document?
4. 冠詞(a/an/the)と前置詞(in/on/atなど)
冠詞という概念は日本語には無い(英語だけではなくアラビア語等にもあるそうです。)ので、なかなか理解し難く、文法書や他人から教えられただけでは、日本人としてはとらえきれない部分がどうしても残ってしまいます。
これは文法書を学ぶだけでは捉えきれない、ネイティブの「感覚」が大きく作用する領域です。
また、日本語には無い前置詞も私達には理解が難しくまる覚えできない事の1つです。
· I’m on the bus.(バスに乗っている)
· I’m in the car.(車に乗っている)
なぜ on と in を使い分けるのか?それは「乗り物」というカテゴリよりも、その物体が「歩き回れる平面があるか(on)」「閉じた空間か(in)」という感覚でネイティブは捉えているからです。
この様に色々な状況においてイメージしながら使い訳が必要な前置詞は一足飛びでは理解できません。
5. リズムとイントネーション
書き言葉は完璧でも、話し言葉になると不自然になる場合、これが原因です。英語には強弱(ストレス)や抑揚(イントネーション)のリズムがあります。単語一つ一つの発音が正しくても、このリズムが日本語的だと「ロボットのような」不自然な英語に聞こえてしまいます。
6. 文化的コンテキスト
言葉は文化と切り離せません。日本では控えめな表現が好まれる場面でも、英語圏ではより直接的な表現が求められることがあります。その逆も然りです。この文化的な背景を理解しないと、文法は正しくても「場にそぐわない」不自然な発言になってしまいます。
逆を言えば、言語を学べば、文化を垣間見る事ができます。
この他に、英語では、可算・不可算名詞があります。使う名詞は数えられるか、そうではないか、数えられるならそれが一個なのか、複数なのかが気になるいう事です。
日本語を話す私達にはそういう事は気になりませんが、他の部分で気になる事があります。
例えば「個」や「匹」等の助数詞です。
私達は自然に「トマトは1個でも、きゅうりは長いから、1本」とか「ネズミは1匹だけど、牛は大きいから1頭」等と自然に考えています。
それぞれの言語は人々がそれぞれ文化的な物を背景に感じながら日々使っています。
言語を学ぶ事はその文化を知る(感じる)入り口でもあるのです。
自然な英語を身につけるための解決策
文法は大切ですが、数学の公式の様に学ぶだけでは、英語や他の言葉はマスターできません。
より質の良い学習する為の方法を挙げます。
1. インプットの質と量を増やす
· 教科書だけでなく、生の英語(映画、ドラマ、Podcast、ニュース、SNS)にたくさん触れる。
· 「この表現、ネイティブは実際に使うのか?」と常に疑問を持ち、調べる癖をつける。
失語症や認知症には色々な症状がありますが、状況や訓練の内容を理解してもらいながら、リハビリを進めることができるとリハビリが進む事がよくあります。この様な経験をしていると、インプットの大切さを切実に感じます。
2. フレーズごと覚える
· 単語帳で単語を1つずつ覚えるのではなく、strong coffee のようにコロケーション(連語)ごと、あるいは短い文ごと覚える。
例えば、「I still have something to do. (まだ、やる事があんねん。)」という様なフレーズを覚えていると、「I still have something to do at work. (まだ仕事でする事あんねん。)」等と少し足して言えたり、「I still have some work to do.」と応用して言い換えたりする事ができます。
英語を話すようになると、頭の中で、いちいち沢山の単語を文法に沿って組み立てて、文にして話すという事はあまりしません。「しない」というよりやってらいれません。会話にはテンポがあるため、極力話し慣れているフレーズを使って、スムーズな会話を促進します。
3. シャドーイングを行う
· お手本の音声のすぐ後を追いかけて発音する。
「シャドーイング」は、正しいリズムとイントネーションを体に染み込ませる最良の方法の一つです。
流行のポップミュージックを歌うテレビに映っている歌手と一緒に歌う様なイメージで私は取り組んでいます。
余談ですが、以前私が出会った、歌手を指導してるような歌の先生は英語の発音がネイティブの様でした。話し言葉も音感が大切な事を実感して、彼の英語を聞いていました。

4. ネイティブのフィードバックを得る
· 言語交換アプリやオンライン英会話等を利用し、自分の英語が「文法的に正しいか」だけでなく「自然かどうか」も確認できます。
今はChat GPTのような人工知能があり、日に日に信頼性が増しています。プロンプトで「ネイティブの英語指導者として教えて下さい」等と入力して、確認したい文章をAIに質問すると適切に、希望通りの指導をしてくれます。英会話の相手にもなってくれたりもします。

5. 細かい文法ルールに囚われすぎない
· コミュニケーションが成立することを最優先にし、時には「100%完璧でなくてもいいや」という気楽さも大切です。
会話等、コミュニケーションの本質は気持ちを伝えることです。文法を気にする事は大切ですが、気にしすぎて、本質を見落とさない様にしたいものです。
アポロ11号の月面着陸の同時通訳もされた事で有名な「通訳の神様」と称された國弘正雄さんは意味の分かる英文をひたすら音読する学習法「只管朗読」を提唱されていました。
まとめると、文法は英語を組み立てるための「道具」であり、完成形そのものではありません。自然な英語を話すには、ネイティブが実際にどのようにその「道具」を使っているかを、生の素材を通じて観察し、真似することが近道です。
焦らず、楽しみながら学習を続けてください。この疑問を持ったこと自体が、あなたの英語力が次の段階に進もうとしている証拠です。
まとめ
英語の勉強を始めた頃、文法を勉強する事で、勉強をした気になった事は、先に書いた通りです。
実際、テストでもその理解度を確認する様な出題がありました。
その為、「英語の勉強=文法の勉強」の様に無意識に思っていたかもしれません。
途方もの無い数の単語を1つずつ覚えるより、文法を勉強する方が汎用性もあり、効率よく勉強をした気にさせてくれます。
その為、単語を覚えるよりも優先して文法を勉強する事に勤しんでいました。
長文を読んで理解できない時は、単に単語が分からないという事よりも、文法が分かっていないので、 理解できないと思った事もありました。
もちろん、そのような部分も思いますが、本当の主な理由は、「単語を知らなかった」という事につきます。
文法も大切ですが、今までに英語の長文を読んでわからなかったり、言えない事があったりした時のほとんどの問題点は単語や熟語を知らない事にありました。
昔の私にはっきりと伝えたい事は、「文法は大切だが、それを気が遠くなる量の単語なども覚えることから逃げる口実にしてはいけない。」という事です。



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