記号のメリーゴーランドとは?
言葉を学ぶとは、単なる記号の暗記ではありません。認知科学者スティーブン・ハルナッドは、AIが辞書的定義だけで言葉の意味を理解しようとする様子を「記号から記号へのメリーゴーランド」と呼びました。これは、実体験に基づかない記号処理が、永遠に意味にたどり着けない状態を指しています。
言葉の意味を辞書だけで調べ続けても、本当の意味にたどり着けないことを指します。実際の体験がないと、言葉はただの記号のままで、ぐるぐる回ってしまうのです。

こんにちは。
「ちゃ」と申します。
娘が3人います。
言語聴覚士として働いています。
コミュニケーションについて沢山考えたいです。
子供達には英語を身につけて、世界中の人とコミュニケーションを楽しんでもらいたいです。
そのために、できる事を日々考えています。
少しでも背中を見てもらえるようにと、英検1級等を取得しました。
子どもはどうやって「意味」にたどり着くのか?
子どもが「リンゴ」という言葉を覚えるとき、ただ音を真似しているわけではありません。赤くて丸くて甘い果物を見て、触って、食べて、「これがリンゴなんだ」と身体を通して理解します。つまり、記号(言葉)と実体験が結びついているのです。
たとえば「自由」という概念(言葉)も、辞書だけではピンとこないかもしれません。
でも、校則がない時間に好きなことをしているとき、「あ、これが自由なんだ」と感じることがありますよね。そうした体験が、記号に意味を与えてくれるのです。
このような身体性のある経験が、記号に「意味」を与える鍵となります。ハルナッドは、すべての言葉が身体に接地している必要はないとも述べています。最初の一群の言葉が身体とつながっていれば、それを基盤に新しい言葉の意味を推測・構築できるのです。
英語学習における「記号の接地」
英語学習でも、記号のメリーゴーランドに乗ってしまうことがあります。例えば、子どもが「time=時間」と覚えても、実際に英語で「time」を使う場面がなければ、意味が実感に接地されません。単語帳だけで学ぶ英語は、まさに記号から記号への漂流です。
では、どうすればよいのでしょうか?
- 身体性を伴う学習:実際に時計を見ながら「time」と言ってみる。遊びや動画を観る中で「time(時間の経過など)」を考え、実感してもらう。
- 感情や動機と結びつける:好きなことしている時間をを英語で考えてみる。自分の経験と英語を結びつけることで、記号が意味を持ち始めます。
- オノマトペの活用:日本語の「ざあざあ」や「ぴかぴか」のような音象徴は、身体感覚と強く結びついています。英語にも「sizzle」「buzz」などのオノマトペがあり、意味の接地に役立ちます。
親子でできる「意味の接地」英語遊び
- 一緒に料理をしながら「cut」「mix」「taste」などの動詞を使う
- 外遊びで「jump」「run」「cold」などの感覚語を英語で言ってみる
- 絵本を読むとき、指差しやジェスチャーを交えて言葉とイメージを結びつける
「time」では簡単すぎるかも知れないので、「economy=経済」という単語でイメージしていただくと、見えてきやすいかもしれません。
金銭感覚もさほど養われていない小さな子供に「経済」という言葉を説明しても、理解してもらうのが難しそうなのは、想像しやすいと思います。
しかし、スーパーにもらったお小遣いでお菓子を買ったり、欲しい物が高価すぎて、買ってもらえなかったりする経験をした後で、その様な単語の意味を考えると、理解しやすくなります。
まとめ
子供の頃、言葉の意味が分からなかったら、親からよく「辞書を引きなさい」と言われる事がありました。
今でも記憶しているのは、「概念」という言葉の意味を親に聞き、その様に言われた時の事です。
辞書を引いて見ると「思考において把握される、物事の『何たるか』という部分のことである…」と出てきますが、この様な辞書の説明を読んでもあまり「ピン」ときませんでした。
しかし、その後ちょっとしてから、テレビのコマーシャルで、「この車のコンセプトは‥」というフレーズを耳にするようになった後に学校かどこかで「concept(概念)」という単語を勉強しました。
そして、そこでやっと「概念」という単語の意味が腑に落ちました。
言葉は記号ですが、意味を持たせるには身体性や経験が不可欠です。ハルナッドの「記号のメリーゴーランド」から抜け出すには、記号を実体験に接地させる工夫が必要です。英語学習も、記号の暗記ではなく、意味のある色々な体験を通して育てていきたいですね。



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