スキーマとは
以前、「スキーマと英語のフレーズのまる暗記について」でも書いたスキーマについて書きたいと思います。

こんにちは。
「ちゃ」と申します。
娘が3人います。
言語聴覚士として働いています。
コミュニケーションについて沢山考えたいです。
子供達には英語を身につけて、世界中の人とコミュニケーションを楽しんでもらいたいです。
そのために、できる事を日々考えています。
少しでも背中を見てもらえるようにと、英検1級等を取得しました。
「スキーマ」という言葉、聞いたことはありますか?
私は学生時代、心理学の授業で耳にしたことがありましたが、「そんな考え方もあるんだな」程度にしか思っていませんでした。
ところが、認知科学者・今井むつみさんの著書『英語独習法』(岩波書店)を読んで、その重要性と奥深さに気づかされました。
スキーマとは、私たちが持つ知識や経験をもとに、情報を整理・理解するための「知識の枠組み」のことです。
心理学では、スキーマは人が世界をどう理解し、予測するかに関わる「心の設計図」です。たとえば「レストラン」と聞いて、白いお皿やフォークを思い浮かべるのは、過去の経験からできたスキーマが働いているからです。
言語学では、スキーマは言葉の意味や使い方を理解するための知識構造です。たとえば「お願い」という言葉を聞くと、丁寧な言い回しや相手への配慮が連想されるのも、言語的スキーマの働きです。
「母語のことばの意味を説明してくださいと言われたときに、ことばで説明できる知識は、じつは氷山の一角で、ほとんどの知識は言語化できない。これは、自転車に乗れても、脳にどのような情報が記憶されているから自転車に乗る事ができるのかが説明できないのと同じことだ。」(今井むつみ著「英語独習法」より)

英語学習にとってのスキーマ
私自身、英単語を覚えるときは「life=生命」といったように、1単語に1つの意味だけを対応させて覚えていました。
辞書に載っている他の意味や例文、発音などにはあまり目を向けず、「とにかく効率よく覚えたい」と思っていたのです。
実際は、「life」にはその他の意味として、「人命」や「命」、「生涯」、「一生」、そして「生き物」等があり、この他の情報として発音や、「wild life(野生生物)」等と例が載っていたりします。
この様な多くの「その他の情報」に対しては目もくれず、主要な意味のみを覚える事に集中していました。「1つの単語にそんなに多くの脳のリソースは割けない」と言わんばかりの学習スタイルでした。
はたして、その様な学習の仕方が本当に要領の良いものだったのか、このスキーマという概念に気づいてからは自信を無くすばかりです。
「急がば回れ」とはよく言ったもので、英語学習でも「とにかく単語を詰め込もう!」と焦って最短距離を探すより、文脈やスキーマを意識して丁寧に理解していく方が、結果的に定着しやすくなるようで、結局は遠回りをしていたのかも知れません。
長い目で見ると、その様にして詰め込みで記憶した英単語が、現在まで実用的なレベルになるぐらいに私に根付いているとは思えません。

友達になる事を意識する
以前、「単語を覚えるときは、その単語と友達になるように」と書かれた文章を読んだことがあります。とても印象に残っています。
たとえば「have」という単語。私はこれまでに何百回も目にし、耳にしてきました。その結果、「持つ」「所有する」だけでなく、「現在完了形で使われる」「三人称単数現在では has になる」といった文法的な特徴も自然と身につきました。
まるで、友達と仲良くなる過程で趣味や癖、家庭環境を知っていくように、英語の単語や文法と「仲良くなる」ことで、知識がスキーマとして定着していくのです。
この事を今井むつみさんは、「単語を『点』で覚えるのではなく、 『線』や『面』でつなげていくような学び方」と表現しています。

多読
辞書を引かずに大量の英語を読む「多読」は、スキーマ形成にとても効果的です。
文脈から意味を推測しながら読み進めることで、語彙や文法が自然と身につき、英語を英語のまま理解する「英語脳」が育ちます。
英語学習者が語彙や文法を自然に習得し、読解力を高める効果的な方法とされています。特に、辞書に頼らずに文脈から意味を推測する力が養われるため、英語を英語のまま理解する「英語脳」の育成に役立ちます。
さまざまな文脈で同じ単語や表現に出会うことで、単語の意味や使い方が「線」や「面」としてつながっていきます。

只管朗読(しかんろうどく)
只管朗読とは、意味を深く考えず、英語の文章をひたすら声に出して読む学習法です。音読を繰り返すことで、発音やリズム、イントネーションが自然に身につき、英語の語感や構文の感覚も養われます。リスニングやスピーキング力の向上にも効果的と言われています。
「只管朗読」という表現に関しては、仏教の「只管打坐(しかんたざ)」からの着想を受けて、英語学習に応用した比喩的な表現と考えられます。
「只管打坐(しかんたざ)」は、ひたすら座禅を組むことに専念するという、禅宗、特に道元禅師が説いた修行の姿勢を表す言葉です。
つまり、「意味を問わず、ただひたすら読む」という姿勢を強調するための言葉です。
「只管朗読」という学習法を提唱したのは通訳の神様・國弘正雄(くにひろ まさお)さんです。
私は彼の書いた「英語の話し方(たちばな出版 ,1999/12/25)」という本で知りました。
彼は「英語は理屈より慣れ」と考え、意味を考えすぎずにひたすら音読することの大切さを説きました。
只管朗読を通じても、スキーマ形成が促されますし、既存のスキーマに英語の音や構文が積み重なっていくことで、理解のスピードや深さが自然と増していきます。

歌
英語の歌を覚えて歌うことも、スキーマを育てる素晴らしい方法です。
歌詞を通じて自然な語順やリズム、発音に繰り返し触れることで、言語パターンが身体に染み込んでいきます。
たとえば、歌の中で使われる表現や文法構造が、実際の会話や読解の場面で「どこかで聞いたことがある」と感じられるようになり、理解や運用がスムーズになります。これは、音と意味、感情が結びついた記憶として定着するため、単なる暗記よりも深く脳に刻まれます。
また、歌うことで感情と結びついた記憶が形成され、単なる暗記よりも深く定着します。これは「只管朗読」とも通じる部分があり、意味を考えすぎずに繰り返すことで、言語感覚が育つという点で共通しています。
そして何より、楽しく身に付きます。
「私たちは悲しいから泣くのではなく、泣くから悲しいと感じる」 — ジェームズ=ランゲ理論
この理論にならえば、「楽しいから歌うのではなく、歌うから楽しい」のかもしれません。 英語の歌を通じて、楽しく学べることも大きな魅力です。
この理論には賛否があるようですが、この様な側面も必ずあると思います。英語の歌を覚えて歌う勉強法は、「楽しくなれる勉強法」と言えます。
英語学習を進めてきた経験を通しても、この事は痛感していました。その為、このサイトでも「歌で勉強する英語」を作って、それを皆さんに薦めています。

まとめ
英語を学ぶ中で、「母語」として身につけた日本語との違いに戸惑うこともあるかもしれません。 でも、単語と友達になることや多読、只管朗読、そして歌などを通じて、英語のスキーマを少しずつ育てていくことで、その差はきっと縮まっていきます。
みなさんは、どんなスキーマを持っていると感じますか? 英語を学ぶ中で、「なんとなくわかるけれど、うまく説明できない」と感じた経験はありませんか? それは、まさにスキーマが働いている瞬間かもしれません。



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