バイリンガル?セミリンガル?

コミュニケーション

セミリンガルという言葉をご存じですか?

バイリンガルという言葉は多くの人がが分かるように、2か国語を自由に使用できる人の事を言います。私をはじめ、多くの人があこがれる状態です。

それに対して、セミリンガルは2つ以上の言語を習得はしているのですが、それぞれの言語能力が完全ではない状態の事を言います。

第一言語の習得が未熟な状態で、第二言語のインプットが過剰になった場合に起こると言われています。

「セミリンガル」という言葉は、1960年代の初頭に、スウェーデで生まれた言葉であり、概念です。

スウェーデン等のヨーロッパの国々では色々な民族が混ざり合って生活している事があります。その様な地域で起こる社会的な弊害として、この問題が取り上げられるようになったようです。

ただ、一口に「言語能力」と言っても様々な角度からの見方があり、人によって、または地域によって、言語は様々な側面があるため、この言葉は簡単に定義できない様です。

テレビや友人の話

 テレビタレントで、あやふやな日本語をしゃべり、それをチャームポイントにして、活躍している、日本人と外国人の親を持つタレントさんを見る事があります。少し日本語のイントネーションがおかしい事を売りにして、茶の間を和ませてくれる分には、そのような事にも価値があると思います。

しかし、あやふやな部分がイントネーションだけだったらいいのですが、それだけに留まらない事も多くあります。

実際に、セミリンガルと思える様なテレビに出ているタレントさんが、今一つ要点を得ないような発言をしている事を見かける事もあります。観ている側としては(制作側も)それが面白くて、エンターテインメントとして成り立っている事が多いです。

しかし、テレビ等でその様な事をチャームポイントの様に見せる人なんて、一握りです。多くのセミリンガルの方は、社会の中で実際に色々な人とコミュニケーションを取って、生活を営んでいるので、不都合を感じている人が多くいると思います。

実際に私が出会った事のある、バイリンガルの友人も、少しその様な所があり、コミュニケーションをとる時に、日本人の友人同士では感じない違和感を感じる事がありました。

具体的な話は、覚えていませんが、言葉のキャッチボール(会話)をする時に、バイリンガルの彼だから、こんなところに投げても上手く受け取ってくれないかも知れない(こんな言い回しをしてもこちらの期待通りに理解してくれないかも知れない)等と先回りして思い、ストレートな表現で伝える様にした事もありました。

その為、私を含めた彼の周りの日本人の友人達は、彼の事を「天然キャラ」の様に扱う事がありました。

 言語機能というのは単に、言葉を発したり、受け止めたりして、他者との意思の疎通を図る(伝達機能)だけでなく、頭の中などで様々な事を論理的に考えたり、認識や情動を深めるために使用する道具(思考機能)にもなります。この他に「行動調整機能」と言われる、言葉の力によって私たち自身の行動をコントロールする機能があり、これらを「言語の三大機能」と言います。

セミリンガルと言われる人は、単に発音やイントネーションがユニークなだけでなく、色々な物事を頭で論理的に整理しにくかったり、他者から受け取った情報も頭の中で整理しにくい事もあるようです。

現時点での私の見解

 英語の早期教育やバイリンガル、そしてセミリンガルについて多くの方が研究をされています。そんな事もあり、ここで結論を出すのは非常に恐縮ですが、私なりに結論は出ています。

 まず、英語の早期教育がもてはやされる風潮がありますが、それも行き過ぎる必要はないと思っています。まずは、日本語をしっかり学び、コミュニケーション手段としてだけでなく、自分が感じる事や思いを、きちん第三者に日本語で伝える事ができる様にする訓練が必要です。

言語化できるようになった思いや考えを軸に、色々な世界を広げていく事が、子供にとって大切だと思います。それは英語の世界かも知れないですし、音楽や絵などの芸術の世界でも良いと思います。

「英語を早くから勉強する事がいけない」とまでは言いませんが、少なくとも、「日本語でしっかり考える力を養ってからでも、英語学習は遅くない」と思っています。

 しかし、ここまで書いて、反対の意見を述べるようで、ややこしくなり、恐縮ですが、英語の発音やリスニングに関しては、年齢が若いうちに慣れさせておくことが得策だと思います。

生後1~2ヶ月で乳児は「あーあー」や「んま・んま・んま」等と言う、喃語と言われる発声をよくするようになります。この喃語の音声の種類は極めて多く、あらゆる音韻体系の音声を含んでいるそうです。つまり、私達大人が一律に話す日本語や英語に限らず色々な音韻を含んだ音声です。しかし、その幅広い音声のレパートリーは母国語を獲得していく過程で、変化し、減っていくそうです。

この様な事を考えると、日本語だけに囲まれずに、早くから英語等の外国語に触れ続けさせることで、発音や聞き取りの能力を維持できると思います。

まとめ

 私自身の体験をふまえると、上記した様に、「そんなに急がなくても、ある程度のレベルであれば、英語操作能力を獲得できると思います。(私自身は中学生の時に英語の勉強を初めて、成績も当初は平均以下でしたが、英検1級をパスしたり、通訳案内士の資格を得るところまで来る事ができました。)」

しかし、英語の勉強を沢山してきたにも拘らず、未だに「th」と「s」や「b」と「v」の聞き分けや発音があやふやな時があります。また、一生かかっても私の英語のSpeakingはネイティブの様にはならないと思います。その為には、集中的なトレーニングが必要だとは思いますが、私自身がそこを目指しているわけではないので、その必要はないと思っています。

テレビなどで、インドや東南アジアの方が、自国語なまりの、いわゆるブロークンイングリッシュを堂々と話される方を見て、その様な姿に、憧れ(というか畏敬の念)の様な気持ちを抱く事があるのは、私だけではないと思います。

とにかく、バイリンガルになる事も良いですが、一か国語を使うモノリンガルとして、しっかり日本語で考えたりできる力を養い、きちんと気持ち等を言葉で表せるようにしたい(子供にさせたい)です。

参考資料

ダブルリミテッド・一時的セミリンガルを考える

永江 誠司「’子供の言語システムの発達と脳ー神経発達心理学序論(Ⅵ)ー」,福岡教育大学紀要,2006年,177-193ページ

コメント

タイトルとURLをコピーしました