以前、大きな障害を負いながらも、いまだに元気に働いて生活できている理由の1つは「なんでもしっかり食べる事」だという事を書きました(しっかり沢山食べる事について)が、もう1つ理由を挙げるとするならば、「呼吸法」を挙げます。
呼吸法とは
色々な方がこの呼吸法について、言及されていますが、私は大まかに「腹式呼吸」と理解しています。
脳出血を起こし、左半身が思うように動かなくなった事で、身体を治すために色々な民間療法を渡り歩きました。鍼灸やカイロプラクティック、催眠療法等、藁をもつかむ思いで色々な物を試しました。そして、色々探した中で出会った事の1つに「気圧療法」というものがあり、普段は合気道を教えている先生から、施術していただいていました。いわゆる「気功」の様なものだと理解していました。主に患部に手を当てて、気を送るという様なものだったと思います。
そして、その先生から習った事で、今でも続けているのが、呼吸法です。
その時に習った手順としては、まず、呼気(息を吐く事)から始めます。口をあまり意識しない程度に軽く開けて、口から息を吐き出します。お腹から息を吐くように、お腹をへこませながら(お腹から空気を吐き出すイメージで)、ゆっくり口から息を吐いていきます。吐く時は、ゆっくり顎を少しずつ引きながら(徐々に下を向くように顔を下に向けながら)息を吐き出していきます。吐き出す息はお腹から出すイメージで徐々にお腹をへこましながら、息を吐いていきます。あまり力まない程度に吐ききったら、そこで息を4~5秒止めます。その後、口を閉じ、ゆっくり顔を上げながら、鼻から吸い込んでいきます。吸い込みながら、(お腹に空気を入れるイメージで)お腹を膨らませます。吸い切った時は顔を上げて、まっすぐ前を向いた状態になります。そして、また4~5秒息を止めてから呼気動作に入ります。
まとめると…
①お腹をへこませながら、下を向きつつ口から息をゆっくり吐き出す ②吐ききった後、4~5秒息を止める ③顔を少しずつ上げながら、鼻からゆっくりお腹に空気を送り込むように吸い込む ④吸いきった後、4~5秒息を止める |
呼吸法を習っている時は、座って練習していましたが、リラックスできているなら、立っていても寝転んでいても良いと思っています。また、呼気や吸気の時間の事は余り言われたことはなく、個人差もあるため本人がリラックスをして、じっくり腹式呼吸で深呼吸できれば、それでいいと思います。
お腹を膨らませたりへこませたりする呼吸
腹式呼吸では、吸気時にお腹を膨らませますが、(当たり前ですが)実際に空気がお腹に入っているわけではありません。
息を吸い込む時に、お腹を膨らませる事で、肺とお腹(腹腔)を隔てている最大の呼吸筋の横隔膜に柔軟性を持たせ、腹腔の方に横隔膜を下げやすくします。胸郭(いわゆる「あばら」)は骨や軟骨等、柔軟性が少ない物で構成されているため、大きく息を吸って膨らませても、実際はさほど膨らんでおらず、胸郭全体が上がっているだけです。そんな膨らみづらい胸郭を膨らますよりも、もっと柔軟性がある横隔膜を下に降ろして、肺の容量を増やした方が効率的だという事です。
そして、息を吐く時は、お腹をへこませる事で柔軟性のある横隔膜を肺の方に押し上げ、効率的に肺に入った空気を押し出します。
腹式呼吸の利点
上記の様に、横隔膜を使って行う呼吸は、胸式呼吸よりも効率的に空気を入れ替える事ができるという利点がありますが、それだけではありません。
まず、第一の利点に血行を促進する事ができます。
身体の真ん中には大動脈と大静脈という大きな血管が2本通っています。横隔膜を上下させることで、その2本の血管をマッサージする事になります。丁寧に座位や臥位で呼吸法を行っていると、身体が温まってきて、血行が良くなっているのが実感できます。
次に、血圧と心拍数を下げて、リラクゼーション効果があると言われています。
実際に行ってみると、血圧と心拍数は実感として分かりにくいと思いますが、リラックスできる事は多くの人が体感できると思います。リラクセーション手法としての呼吸法 という論文にも呼吸法を行う事で、血圧と心拍数が下がり、リラグゼーション効果がある事が述べられています。
この他、脳波がリラックスした状態の時に出るα波になりやすく、精神を安定させるセロトニン神経が活性化するという報告もあり、リラックス効果がある事が証明されています。(呼吸法はなぜ健康に良いのか?)
また、胃腸運動の改善も挙げられます。
色々な所で腹式呼吸が胃腸の調子を整える事を言及されていますが、私自身も日々それを実感しています。私は毎朝、5分程度は必ず呼吸法をする様にしているので、毎日、快便です。機序としては、腹式呼吸により能動的に内臓をマッサージし、血流が促される事になるというものだと思います。
美木良介さんが「ロングブレスダイエット(ロングブレスとは | ロングブレスダイエットの美木良介 Official Web Site )」を提唱され、内臓機能を活性化する事に言及されていますが、これも色々な方が言っておられる呼吸法に通じるところがあり、内臓機能の調子を整える事によるダイエット効果があるのは事実だと思います。
この他、前述の論文等には、肺のガス交換が効率化される事も報告されています。
禁煙の手助けも
あまり、言われている事ではありませんが、呼吸法はタバコを止める補助的な役割も担いえる存在だと思っています。
私は約20年前まで、1日に1箱(20本)は消費する喫煙者でした。約10年間タバコを吸っていましたが、喫煙の習慣を断ち切る事ができるまで、何回もタバコを止める挑戦をしていました。しかし、結局は脳出血を起こすまで、喫煙習慣を止めれずにいました(脳出血を起こしたことで、数か月間寝たきりになったため、止める事ができました)。私自身が禁煙できたのは、喫煙する事が不可能な状況が続いたためで、何か努力をしたという事ではありませんが、呼吸法を習慣的にする様になってから、喫煙する事がリラックスに繋がっている理由を垣間見えるようになった気がしています。
その理由というのは単純で、「呼気を大切にする」という事です。
私が教えていただいた呼吸法は呼気から始め、丁寧に時間をかけて吐いていきます。呼気の時間は人や体調によって様々ですが、丁寧に息を吐いていると、吐く時にリラックスできているのが実感できます。
前述した論文の中にも、呼気時に心拍数と血圧が下がるという記述がある通り、呼気を丁寧にしていると血圧等の低下に合わせて、身体を弛緩させる事ができているのを実感できます。
喫煙していた時の事をよくよく思い出してみると、タバコを吸っている時も、タバコの煙を吸い込んでいる時よりも、吐いている時にリラックスできていた様な気がします。つまり、タバコを止めたい人が、喫煙の代わりに呼吸法を行う事で、それが代替手段になり得る気がしています。呼吸法はタバコを止めれるだけでなく、前述したような効果があるため、健康への近道になり得ると確信しています。
私のやり方
この様に、「呼吸法は良い事尽くめ」と一所懸命述べていますが、私自身はそれを四六時中できているわけではありません。
1日の内の限られた時間しか、できていません。本当は、四六時中できれば良いのですが、そこまで習慣化できているわけではなく、1日の決めた時間と気付いた時のみしています。
決めた時間というのは、具体的には朝の通勤で電車に乗っている時です。約30分間乗っている時間の内、前半の20分は読書の時間にして、後の10分間は目を閉じて、瞑想をしながら、呼吸法を行っています。
また、気付いた時というのは、信号の待ち時間等、短時間何もする事が無くて、呼吸法で時間を使える事に気付いた時です。
もしかすると、もっともっと時間を割く必要があるかもしれませんが、現在はこの様な形で落ち着いています。
みんなにやってもらいたい
ここまで書いてきたように、「呼吸法」を実践する事は、本当に身体は基より、心も整える事に繋がります。しかし、ほとんどの人はその事を知りません。もし、知っていたとしても、それを実践しようとはしません。その理由は2つあり、「実践する必要性に迫られてはいない」のと、「その効果を実感できるのに時間がかかる」という事だと思います。私自身も、大きな障害を負わなかったら、ここまでこの呼吸法を熱く他人に語る事はなかったと思いますし、習慣として20年間も続けてこれなかったと思います。
この呼吸法を習慣化するまで、色々な入り口があっていいと思いますし、この様な事をしなくても、身も心も健康であればそれでいいと思います。しかし、少しでも身体や精神を整えたいと思っている人には、是非やってほしいと思っています。
本当は世界中の人がこれを日常的に実践すれば、世の中から争いごとや犯罪が無くなり、もっともっと良い世界になるとさえ思っています。
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