英検1級に5年という歳月を要した原因等(二次試験)

英語

2度の失敗

 「二次の面接試験は一次試験をパスできる素地(学力)さえあれば、何とかなる」と内心で思ってしまっていました。特に、何回も受けた一次試験の(出題されるトピックが二次のトピックと似ている)writing sectionはどちらかというと得意分野だと思ってしまっていた事が、その様な思いに至った原因になると思います。そのために、2度も失敗をしてしまいました。

 また、準1級では二次試験も大した苦労なく合格してしまった事で、一次試験に対して最初の方はあまり対策に真剣になれなかったのと同じ様な理由もあり、二次試験(面接)に対しての対策もはじめは余りしていませんでした。それと、一次試験突破による「燃え尽き症候群」の様なものも少しはあったのかも知れません。

その様な自身の二次試験の失敗が「慢心」によるものだと理解するのに2度の失敗経験を必要としてしまったわけです。二度目の面接後に、「今の実力では全く歯が立たない」という思いを抱かざる得なかった事で、本腰を入れて対策する事になりました。

二次試験の実際

 二次試験の当日は1つの教室に一定の人数が集まった後、グループに分かれて試験が行われる教室のあるフロアーに行きました。受験者の多くは20歳以上の女性だった様な気がします。よくインターネットや他のメディアで「小学生で英検1級に合格」や「スーパー中校生、英検1級に合格」なんていう話題を目にしていましたが、3度の受験でついに、高校生以下と思われる受験生を私は見る事はありませんでした。

 この面接試験では周知のとおり、ショートスピーチで5つのトピックが出題されるわけですが、新聞の購読はしなくなっていたものの、普段から世界情勢や政治の事の事をはじめとする社会問題等に対してそれなりに関心を持っている(と思っていた)私は、前述の様に慢心で挑んでしまいました。1回目と2回目の試験の内容を今はあまり覚えていませんが、「Is the Japanese healthcare system a good model for other countries?」の様な「知っているけれども、興味が無く、深く考えたことが無い、あるいは考える必要が無く、興味が無い」事柄が問題文に並んでいた事だけは覚えています。

3度目の挑戦の事前対策

 2度目の受験前は1度目より対策をしたと思いますが、一次のwriting対策で作ったエッセイを音読して、覚える事ぐらいの対策だったと思います。しかし、その程度の対策で何とかなるような英語力の素地は私には無かった事は、結果が示す通りでした。2度の面接で、全く歯が立っていない事をやっと理解させられた私は、オンラインで講師の方にレッスンをお願いする事にしました。2ヶ月ぐらいの間に1時間のレッスンを15回ぐらい受けたと思います。費用は5万円ほどでした。

レッスン内容

 英検の勉強を初めてお金を払ってレッスンを受けました。レッスンの主な内容は、渡された教材の中にある50個程のスピーチを大まかに覚えて、それらを2分間でスピーチできるように練習しました。レッスンでは毎回、講師の方に模擬試験官になってもらい、ひたすら模擬面接をしてもらいました。

教えていただいた、大切な事ととしては、上記の教材を使って、「テンプレート英検1級に合格するためのwriting対策 – 色々な形のコミュニケーション (interrogaativeblog.com)を参照してみてください)に沿ってスピーチを組み立てる」事と「質問には明確に回答して、理由を述べる」、そして「質問には簡潔に答え、喋り過ぎない」事です。

 2分間のスピーチは何回も模擬面接の中で練習しました。どんなトピックでも当てはめる事ができる汎用性のあるテンプレートを活用して、色々なトピックの話をそれに当てはめる練習をしました。何回も2分間スピーチの練習をしていると、自然に5秒以内の誤差でスピーチを終える事ができる様になっていました。まさに「習うより慣れた」という感じでした。

 また、質疑応答の練習では、明確に結論から(質問に)答え、その後「Because」で始まる文章で理由を明確に述べる文章に繋げる事を教えてもらい、ひたすらその練習をしました。これも癖の様になり、その答え方が自然と反射的にできる様になりました。

質問に対して「簡潔に答え、喋り過ぎないようにする」理由は「しゃべりすぎると文法をはじめ、様々な表現でネイティブでない事による不自然さが露呈する可能性がある為」、と「面接試験の時間は限られているので、それぞれの質疑応答の時間を短くし、してもらう質問数をできるだけ増やしてもらう為」です。後者の、質問数を多くする理由は「質疑応答の数を増やす事で、1個のミスによるダメージを多くの他の回答により薄める事ができる為」です。

これらは、約5年経過した今でも、深く印象に残っている程大切な事だと思います。そして、今でもこれらをおさえていた為に合格できたと思っています。

試験当日

 1級の面接試験は午前にありました。面接官は1日に何人もの人の面接を行わなければなりません。後の方だと疲れて、好意的な気持ちで面接をしてもらえないかも知れないと思ったので、会場には1番乗りをして1番に受付を済ませました。この辺りは、私の単なる邪推ですが、もし発音等が凄く上手な方の後に面接を受けてしまうと、比較された挙句、無駄に面接の印象を下げかねないとも思いました。そのため、余計な比較対象を創らない様に、その日の最初の方に面接を受けるようにしました。

 そして、思わく通り、その日の1番で面接に挑む事ができました。

面接官は40歳前後と思われる(おそらく)アメリカ人の男性と50代半ばぐらいの日本人女性でした。入室し、名前の確認と簡単な日常会話までは、談笑する様な雰囲気で対応していただけました。この辺はいつもの事で、トピックカードを渡され、本格的に面接試験が始まるまでは、面接官の表情は柔らかく、リラックスして本領を発揮できるような雰囲気を創ってくださりました。

 次に、トピックカードが渡されました。いつもの事ですが、この時点から先程までの面接官のにこやかな表情はなくなり、「ピッ」と彼らの表情は引き締まります。渡された面接カードには私が練習していた環境問題について問うものがありました。最初、それにしようかと思ったのですが念の為、その他の選択肢を見てみると、「努力か才能か」についてのトピックがありました。この後者については、対策で使った教材には無かったのですが、日頃から考える事が多く、持論も持っていたので、そちらにしました。論理的に考え、それを選んだというよりも、単に「その事について考えたり、話したりするのが好きだから」という様な気持ちが強かったと思います。

スピーチでは具体的な例として、「大リーガーのイチロー選手の話」、「マーガレットサッチャー氏が残した『私は努力をせずに成功した人を知らない』という言葉」、そして「努力を積み重ね、国体で優勝した私の友人の話」を挙げて、話しました。もちろん、上記した頭に叩き込んだテンプレートに沿って文章を構成できました。そして、練習の成果があり、ほぼ2分ピッタリで終わる事ができました。文法的には違和感があったところもあると思いますし、表現として(ネイティブであれば言わないような)なめらかでない部分も沢山あったと思いますが、難しい表現はせず、シンプルなプレーンイングリッシュを心がけたので、私が言いたかった事は確実に伝わった実感はありました。面接官の表情も、終始頷きながら笑顔でスピーチを聞いてくれていたので、その様に思えました。

 質疑応答での最初の質問は「努力をする上で一番大切な事はありますか?」でした。それに対して、「必要な事は継続する事です」と端的に答えました。

 次に、「イチロー選手はできるだけ長い時間練習をする事が大切と言われたようですが、具体的にどれぐらい練習をすればよいのですか?」と聞かれました。そして、「彼はどんなことでも1万時間練習するとその道の達人になれる(1万時間の法則)と言っていました」と答えました。

 その次の質問は、「努力を継続させるために必要なものはありますか?」というもので、「大切な事は、その事を好きになる事です。」とここまで端的にリズム良くスムースに答える事ができていました。しかし、この質問に答えた時、女性の面接官は「えー、そんなに物事を簡単に好きになれないよ」か「簡単に好きになれないから努力ができないのよ」とでも言いたげな表情を浮かべられた事をよく覚えています。

 最後の質問は、「努力すれば色々な事ができるようになるのは分かりましたが、努力する気が起こらない人に努力を促すにはどうしたらいいですか?」というものでした。この質問に対しての答えは全く準備していなかったため、「Its is a difficult question….」と前置きして、少し考えてから(多分5秒ぐらい)、「私の娘に対してっだたら」と前置きして(この時二人の試験官はしっかり目を見開いて頷きながら私を見てくれていました)、「私は彼女に偉人の伝記を読む事を勧めます」と言い、「例えば、ヘレンケラー等」と続けました。

(質疑応答の質問はあと1~2個あったと思いますが、忘れてしまいました。)

そして、「OK!」と言わんばかりに、二人とも大きく頷いて下さり、「Time is up!」と試験が終わりました。

 それまでの2回不合格だった二次試験の終了時は最後の挨拶で「Goodbye.」と言った時、試験官から笑顔で挨拶を返してもらえた印象はなかったのですが、この時は、二人とも満面の笑顔で送り出してくれたのが印象的でした。この時の私の気持ちは、「少なくとも『楽しい会話だった』と思ってもらえたに違いない」というものでした。

そして、数日後に合格通知を受け取る事ができました。

必要な事

 今回、二次試験に無事(?)合格できて、私が思った準備や当日に大切にするべきPointをまとめると、

準備方法

1.実際に何回も2分間のスピーチを練習して、2分間という時間感覚を養う。(実際に何回も練習すると、この感覚は確実に養えます。)

⇒上記しましたが、オンラインで講師の方に実際に時間を測ってもらいながら何回も練習しました。

2.色々な話題に興味を持つ。(トピックは多岐に渡るので、様々な事に関して、少し詳しくなり、ある程度自分の言葉で説明でき、楽しく持論を展開できるようにする。)

⇒日頃から、ネットなどで過去に出題されたトピックに繋がる記事等を目にすると、興味を持ってそれを見たり聞いたりする様に心がけ、その事についての自分の意見を頭の中で言語化する様にしていました。常に、興味のアンテナが貼られている様な感じでした。

3.色々なトピックに関してのキーワードを覚える。

⇒準備する時、ショートスピーチ用の文章をまる憶えすよりも、その説明で使うべきキーワードを頭にしっかり入れる。(私は文章をまる憶えする事はできませんでした。使用するキーワードとを覚え、その時の自分の言葉で説明できるようにしました。)

当日の心構え

1.できるだけ早い時間に到着し、早めの時間に面接を受ける事ができる様にする。

⇒先に述べた理由の通り、面接官が疲れていない早めの時間に済ませる方が気持ちよく面接してもらえると思います。また、充分な時間の余裕を持って現地に到着する方がリラックスして受験できるので、本領を発揮できると思います。

2.面接は笑顔で。面接といより、談笑できるようにリラックスする事を心がける。

⇒就職面接と違い、見られているのは英語を含めたコミュニケーション能力です。「楽しい」と思ってもらえるようにする事は、プラスの要素にはなっても、マイナスの要素にはなり得ません。コミュニケーションは自分が楽しまなくては相手も楽しくありません。難しいですが、少なくとも自分は楽しめるように心がけました。

3.トピックは「その事について考える事が好き」と思う事を最優先基準にする。

⇒トピックを選ぶ基準は練習したものや準備してきたものにするのも良いですが、もしその中でも「その事について考えたり話したりするのが好き」というものがあれば、それにすると面接官との会話が楽しいものになると思います。

まとめ

 色々書いてきましたが、一番大切な事は「ショートスピーチを規定の時間で綺麗に収める」事だと実感しています。これがしっかり土台としてないと、その後の質疑応答で面接官が丁寧にこちらに向き合ってくれない気がします。これは単なる私の印象で、色々な手記を見ていると「ショートスピーチはボロボロだったけど、後の質疑応答で挽回できた」というものもあります。しかし、実感として、ショートスピーチで「楽しかった」と思えてもらえば、続く質疑応答で面接官も質問のやり甲斐が出てきて、積極的に面接を楽しんでくれると思います。

 孫氏の兵法に出てくる有名な一節に「彼を知り己を知れば百戦殆(あや)うからず」というものがあります。つまり、「敵情を知る事と客観的に自分を知る事が大切」だということです。英検1級であれば、「過去問でしっかり対策をしながら、自分が今どのくらいの位置に居るのかを客観的に把握する」という事だと思います。

私がこの試験を受け出した頃は、その二つは全くできていませんでした。そのため、5年もの歳月をかけてしまったのだと思います。そして、何回か受けていた試験とと過去問やそのほかの教材で「彼を知る」事ができました。しかし、「己を知る」事に多くの時間を使ってしまったと思います。特に二次試験対策でオンライン講師の方に色々と教えていただく中で、己を知る事ができたと思います。

今後は、何かの試験を受ける機会があれば、「己を知る事」に注力したいと思います。

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