「障害者」という表記について

障害者について

 

「障害者」という表記を「障がい者」にするか、「障碍者」にするかという議論があります。この様な議論は英語でもあり、「disabled person」と表記するか「handicapped person」とするか、「challenged person」とするか、はたまた「person(もしくはpeople) with disability」にするかという議論です。

この事に関して、当事者(私)からの率直な意見としては、「以前から使われてきた言葉なので、そのままでいいと思う」です。

 言葉は「他者にメッセージをできるだけ明確に伝える手段(コミュニケーションの基盤)」であり、「思考を整理する手段(知的活動の基盤)」、そして「感情を養う手段(感性・情緒の基盤)」の3つの役割があると思っています。この事を前提にして、この「障害者」という言葉を考えると、この言葉を使用する時は主に他者にメッセージをできるだけ明確に伝える時です。

そういう意味でこの言葉を捉えると、今まで「障害者」という名詞が使われてきたので、この表記がその事象をメッセージとして伝えるのに、(少なくとも私にとっては)1番伝わりやすいと思います。特に、漢字の中にひらがなが入る言葉はあまりなく、その様に表記されると、あえて「がい(害)」という言葉に捉われて、強調されてしまっている様な気がします。

 次に、この議論に関して、「そんな事を考え、上辺だけ取り繕うよりも、もっと大切にして考えるべき事が他にあるのでは」という感情が湧きます。

世の中には、外見(そとみ)だけ良くして、中身が伴わない事が多くありますが、この事もその1例の様なものだと思います。この言葉の「害」という外見だけ取り繕うよりも、他の取り繕わなければならない事があると思います。引いて見ると、この様な上辺を取り繕う事で、もっと大切な本質的な事が見逃されるような気がしてなりません。平たく言うと「そんなどうでもいい事を考えるよりも、もっと大切な本質的な事を考えましょうよ」という事です。

 この他に、読みやすい日本語の文章が少しですが読みにくくなってしまうと思います。

英語の文章を読んでいて、いつも思うのですが、日本語と違い英語で書かれている文章の文字は、アルファベットで似たような文字が並んでいるために、視覚的にメリハリがありません。そのため、一(ひと)単語ずつしっかりと目を通さなくてはなりません。しかし、漢字とひらがな、そしてカタカナで構成されている日本語での文章は読みやすく、読んでいて、その文章の内容がすぐにイメージしやすいと思います。その読みやすい日本語の良さを少しですが阻害してしまっている様な気がします。

 また、屁理屈かもしれませんが、この障害者の「害」にこだわるというのは、例えば「電話番号に『4(死)』を入れないで欲しい」と携帯電話屋さんで言っている人がいるとすると、「へー、そんなとこにこだわる人もいるんやー。」という思いを抱くのに似ています。

 英語の表記の事も同じですが、健常者と言われる(思っている)人が障害者に対しての実直な思いやりで、この様な議論をしていただくのは、悪い事では無く、ありがたい事だと思います。

しかし、障害当事者からあえて、わがままを承知で言わせて(書かせて)いただくと、「そんな事で議論して、皆の大切な時間を使われても、申し訳ないですし、大きなお世話です。」となります。

ここまで書くと、角が立ってしまい、「『害』という文字に捉われているという事は、お前こそ障害受容できていないから、こだわり過ぎている」と言われそうですが、このサイトでは「障害者」という言葉のままで表現したいと思うので、言い訳として綴っておきました。

ちなみに、政府も10年以上も前に、障がい者制度改革推進本部で審議が行われ、インターネット調査や関係者へのヒアリングを行い、推進会議の下に「障害」の表記に関する作業チームを設置することが決定されました。同作業チームにおいては、平成 22 年8月以来、計6回にわたって精力的な議論が行われました。

その検討結果はこちらです⇒s2.pdf (cao.go.jp)

また、文化審議会国語分科会の検討結果はこちらです⇒92880801_03.pdf (bunka.go.jp)

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