よく映画やアニメで、動物も私たちと同じように話して、コミュニケーションをとる場面が見られますが、人の体と動物の体(特に音声を生成する構音気管)の特徴を見てみると、アニメなどのような想像の世界ほど簡単にはならないようです。
上の図のオトナの舌の奥の少し色の付いた所には咽頭腔という左の猿や赤ちゃんにはあまり無い空間が存在します。この空間を肺に入るべき空気と胃に入るべき食べ物が通るのですが、これが大きく広がることによって、口の中で取り込んだ食べ物が胃に入らずに肺に入り込んでしまう(「誤嚥」といいます)リスクが高まってしまっています。猿や赤ちゃんはこのような空間は少なく、舌を越えればすぐに食道の入口が待ち構えており、成人の人間よりも少ないリスクで食べ物を食道に送り届けることができているようです。
この誤嚥を起こすと高齢の方によく見られる「誤嚥性肺炎(肺に空気以外の食道に流れ込むはずの異物が入った為に起こる肺炎)」が起こる可能性があります。なぜ、わざわざそのようなリスクを背負って、人間は発達したのかは神様しかわかりませんが、その空間を使って行えているもうひとつのことが、おしゃべりをすることです。この空間がないと「フォルマント周波数」という、母音を生成するために必要な周波数が作りにくいのだそうです。
フォルマント周波数とは音響的に音を特徴づけ、異なる他の音と区別させる音の成分の事。音声スペクトログラフという音を目の見える形に記録して分析する装置があるが、それで人の声を視覚的に観てみると、特に共鳴している部分を低い順で第一フォルマント、第二フォルマント…という。
このことからも、人間は食べることと同じくらい他人とのコミュニケーションを生得的に大切にしてきたのかなと思います。
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